サウジがドバイに仕掛けた経済戦争の真意 中東の経済覇権を狙うサウジの野望から見えるもの

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ドバイはUAEを構成する首長国の一つだ。サウジに比べてよりリベラルで、インフラ設備が整っているため、外国企業に選ばれやすい。2020年末時点、UAEには3100社の外国企業が進出している。2020年には新たに300社が進出しており、進出企業数は前年度比で10.7%増えた。このうち123社はドバイ金融証券取引所に上場しており、外資企業の2020年度の経常利益は総額約120億ドルにも達したという。

一方のサウジは、金にモノを言わせて、ライバルのドバイを出し抜こうと躍起になっている。2021年1月時点で、サウジは多国籍企業24社の誘致に成功した。HQをドバイからリヤドへの移転を決めた企業の中には、世界最大で4大会計事務所の一つ、デロイト・トウシュ・トーマツ会計事務所や、世界最大級建設会社ベクテル、ペプシコーラ社といったアメリカ企業や、インドのホテル・不動産ユニコーンのオヨ・ルームズ(OYO)が含まれる。OYOはサウジに10億ドルを投資している。

この決定をサウジが発表した後、サウジの投資大臣は「特定の都市や国を狙ったわけではない。われわれがターゲットにしているのは企業なのだ」と述べたが、サウジを地域最大の金融・観光中心地にして、UAEの座を奪おうとしているのは明らかだ。

ドバイの経済的繁栄は長年の努力の結果

ドバイの外国企業誘致は、ドバイ政府が長年行ってきた努力の賜物だ。ドバイにHQを構えた企業の移転は容易ではなく、どの会社も皆、腰が重い。ドバイの競争力は、サウジよりいっそう柔軟な法律にある。2021年1月下旬、UAEは外国人投資家にUAE国籍取得を許可する法律を施行した。それまでは30年以上国内に継続して滞在した者に限られており、長期滞在者でも国籍取得は難しく、在住外国人に初めて永住権を与えたのは2019年6月だった。

住民全体の8割超が200カ国以上の外国籍であり、投資家や実業家、起業家、高度な能力を有する専門家や学生の帰化条件が緩和されたことを外国人コミュニティーは歓迎している。

さらに、許可制だったアルコールの購入や消費も自由になり、それまで犯罪とされていた未婚の男女の同棲も認めた。UAEはこういった措置を発表することで、サウジに対抗している。一部の金融機関の中では、サウジ支店を名目だけのHQにして、ドバイのHQを温存する形でやり過ごそうとしているところもある。

UAEからは、「単一市場化を進めようというGCC(湾岸協力会議)の経済政策に反する」とか、「無理が通れば道理が引っ込む。強制したところで無理は続かないことは歴史的に証明されているではないか」といった批判が強く出ている。

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