サウジがドバイに仕掛けた経済戦争の真意 中東の経済覇権を狙うサウジの野望から見えるもの

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サウジはアメリカの大統領選挙で敗北したトランプ大統領の望みに応えて、2021年1月5日にカタールとの断交を解消した。カタール航空がイラン領空を通過するため年間1億ドルにも上る領空使用料を断って、イラン経済封じ込めに協力するためだった。サウジと一緒にカタールと断交したUAEやバーレーン、エジプトも足並みをそろえて国交を回復させたが、不協和音が生じている。

カタールは国交回復のため次のような戦略をとった。エジプトには出稼ぎ労働者市場のカードをちらつかせ、メディアを使ってエジプト世論を味方につけた。バーレーンは「所詮、サウジの金魚のフン」と眼中になく、全力でリヤドを軟化させ中立化するよう働きかけ、UAEを4カ国内で孤立させ、最終的に国交回復に同意させたのだ。

ムスリム同胞団問題についても、根絶やしにしたいUAEに対して、サウジはバーレーンの国会にムスリム同胞団議員がいることを問題視しなかったり、イエメンのムスリム同胞団を支援したりしている。サウジには聖地メッカ巡礼の“ハッジ外交“という切り札があるので、大局の変化に備えてムスリム同胞団との関係を温存しておきたいのだろう。そういうところが、UAEにはストレスだったと思われる。

石油産出量でも対立を見せるが……

そしてとうとう2020年12月、サウジとUAEはOPEC(石油輸出国機構)で対立してしまった。石油の生産量を減らしたいサウジにUAEが同調しなかった。OPECの意向を無視した独自の生産枠を設けるなど、サウジ主導の合意形成に水を差し、OPECを紛糾させた。

そんなこんなで、GCCの真ん中のCは「協力(coorperation)」ではなくて「対立」(conflicting)のCと揶揄されるほど、対立する様相を呈している。

だが、それでもこの両国は兄弟国なのだ。アラブには「私と兄弟で結束して従兄弟とけんかし、私と従兄弟でよそ者とけんかする」ということわざがある。アラブ諸国の関係というのはこのことわざどおり。けんかしても仲直りできるし、仲たがいしていても敵が現れれば結託する。

GCCの目下最大の望みは経済発展だ。ビジネスや観光を活性化させたいと思っている。親米であっても中国とも良好な関係にある。中国は中東進出に意欲的だ。政治的には中東問題に中立の立場をとる。内政不干渉が原則だ。

GCCは中国の一帯一路構想の経済恩恵にあやかりたい。その中国はイラン・トルコ・サウジなどの勢力争いには関わらず、勝ち馬に乗って一帯一路構想を実現させる算段だ。

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