中東諸国が中国の「一帯一路」を利用する理由 オイルマネー以外の収入を求め中国に接近
アメリカのバイデン新政権が発足し、トランプ政権に引き続き中国との関係がどうなるのかに関心が高まっている。アメリカにとって最大の懸念は米中関係であるのは間違いない。
同時に、その米中関係の行方を注意深く見守り、あるいは利用しようとしている地域がある。中東地域だ。これまで中東地域で発生する問題は、第1次世界大戦後にオスマン・トルコが解体され、戦勝国らが人工的に引いた国境で分断されたことや、パレスチナにイスラエルが建国されたことに原因があると説明されてきた。
21世紀の中東問題は「一帯一路」に起因
だが、それはすでに20世紀の話。現在の21世紀で中東問題の要は、中国が推し進める「一帯一路」構想なのだ。2013年に中国が発表したこの構想は、世界70カ国以上を鉄道や航路のネットワークで結びつけようとするものだ。該当する各国の思惑もあり、今後はいろんな展開がありうる。中国が提案した一帯一路に、もはや石油だけでは食っていけない中東諸国がその解決策の一つとして乗りかかろうという理由がある。
まず、一帯一路は北緯と南緯に分かれる(次ページ図)。北緯は、中国からモンゴル、ロシアを横断してヨーロッパへ向かうルートだ。中国、カザフスタン、ポーランド、ドイツ、フランスへと、物流にかかる時間がこれまでの最長60日から18日までに短縮される。
一方の南緯は、中国からウズベキスタン、タジキスタン、イラン、イラク、トルコを結ぶ。こちらは石油や天然ガスといった重量の大きな貨物の輸送ルートとなる予定だ。いわゆる「マラッカ・ジレンマ」(中国のエネルギーや物流にとって死活的な意味を持つマラッカ海峡の安全航行がアメリカなどに事実上管理されている現状のこと)を回避でき、アメリカ海軍の影響が及ばないルートだと言える。これが実現すれば、物流コストを現在の7割水準にまで下げることができるとされている。
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