多国主義へ復帰も、中国の覇権阻止という基本は不変
アメリカで、トランプ政権からバイデン政権への移行で生じるのは、単なる手法の変化なのでしょうか? それとも理念の変化なのでしょうか?
そして、理念の違いは、現実の政策を変えていくのでしょうか?
以下では、それを、いくつかの政策分野について見ることとします。
まず対外政策を見ると、トランプ大統領は、「アメリカ第1(アメリカ・ファースト)」を宣言して、パリ協定、イラン核合意、世界保健機関(WHO)などの国際的な枠組みから離脱しました。
そして、自由世界のリーダーとしての地位を自ら放棄しました。
バイデン氏は、多国主義へ復帰し、脱退した国際的な枠組みに復帰することを明言しています。日欧同盟国との協力も進めるでしょう。
ただし、これは手法面の変化であり、最終的な目的が中国の覇権阻止であるという点は、変わりません。したがって、バイデン政権になっても、中国に対する強硬政策は変わらないと考えられます。
中国の覇権阻止は、アメリカの総意です。ただし、アメリカだけが独善的に行動するのでなく、同盟国との協力によって中国の拡大を抑制するという多国主義に変わるのです。
中国の覇権阻止とアメリカ第1主義は、本来は同じものではありません。しかしトランプ氏は同一視しました。
それは明らかに誤った考えであり、多国主義への復帰は正しいものです。
バイデン政権が対中制裁関税の引き下げを行う可能性はあります。
ただし、雇用を守るために製造業をアメリカに戻そうとする可能性もあります。これは経済的には間違った目的ですが、政治がこうしたバイアスを持つことは避けられません。
これは、トランプ氏と変わらない点です。この点については、後述します。
ハイテク分野での中国製品規制は、強まる可能性があります。トランプ氏もバイデン氏も、米中覇権競争が、AI(人工知能)やビッグデータなどの最先端技術で決まると理解しているからです。
中国は、5G、通信衛星、そしてワクチンなどを用いて、一帯一路からアフリカに至る地域での影響力を拡大しようとしています。アメリカがこれを阻止できるかどうかは、定かではありません。
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