豊かになるための施策は、世界経済での自国の位置を正しく認識し、世界経済の分業体制の中で正しい役割を演じることです。
アメリカにとって本当に必要なのは、古いタイプの製造業は中国や新興国に任せ、自国ではハイテク産業や高度サービス産業を成長させることです。
しかし、このことは、なかなか人々の理解を獲得できません。
トランプ氏の政策は、アメリカ第1主義と言われました。しかし、実は、アメリカの競争力を剥ぐ政策であり、アメリカのためにならない政策であったのです。つまり、考え方が間違っていたのです。
この問題については、新政権の考えにも、はっきりしないところがあります。
バイデン氏自身は、トランプと同じ考えを持っている可能性があります。そして、同じ誤りに陥る危険があります。
実際、製造業を復活させてアメリカの雇用を増やすと明言したこともあります。本当にそう考えているのか、あるいは政治的なメッセージなのか、どちらかはわかりません。
ただし、政治家が何を言うにせよ、市場メカニズムが機能する国では、マーケットが正しい成長戦略を採用していくでしょう。
それが自由主義経済国の大きな強みであり、中国との違いです。
ラストベルトをバイデン氏が制した意味
この点からいうと、大統領選でバイデン氏がラストベルト(ミシガン、ウィスコンシン、ペンシルヴァニア)を制したことは、大きな意味を持っています。トランプ流のやり方では駄目なことを、選挙民が認識した結果だからです。
実際、日本ではあまり報道されていませんが、ラストベルトは、自動車や鉄鋼ではなく、医療・健康産業でかなり顕著に復活しつつあるのです。
「製造業」対「ハイテク企業」という問題に関しては、副大統領になるカマラ・ハリス氏の考えとその影響力が注目されます。
彼女とシリコンバレー企業の関係は友好的です。彼女は、巨大IT企業に対して穏健な政策を志向するだろうと予想されます。
その結果、巨大IT産業に対する敵対的な政策が変更され、アメリカの技術力を高める方向に変わるでしょう。
ただし、巨大IT企業に対する国民の反発が強まっている面もあり、これをどうするかの手探りが続くでしょう。独禁法適用ではなく、別の政策手段が模索されるでしょう。
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