中東諸国が中国の「一帯一路」を利用する理由 オイルマネー以外の収入を求め中国に接近

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南緯が通過するイランは、現在はアメリカによる経済制裁下にある。また、イラクも治安が悪いため、南緯構想は進んでいないのが実状だ。その代わりに2020年12月8日、トルコのイスタンブールからジョージア、アゼルバイジャン、カザフスタンを横断して中国の西安まで結ぶ鉄道貨物輸送ルートが開通した。これにより、1カ月かかっていた輸送期間が12日に短縮された。

イランがイラクやシリア、レバノン、イエメンにシーア派勢力による支配地をつくろうとしていた2004年ごろ、ヨルダンのアブドラ国王がワシントンポスト紙のインタビューでイラクやシリア、レバノン一帯を三日月に例えて、「シーア派三日月地帯」と名付けた。ヨルダンやサウジアラビアをはじめとする湾岸諸国は、イランの台頭と三日月地帯の形成に強い危機感を持っていたが、どちらとも阻止することはできなかった。

三日月地帯を確保しようとするイラン

イランがイエメンを含む三日月地帯を支配下に置く本当の目的は、イランの一帯一路における利権と南線の安全の確保だ。

アルカイダは反米勢力だったが、イスラム国は地域に拡大するイランの影響力に反発する反イラン勢力として誕生した。イスラム国が勢力を拡大した地域は、イランから延びてくる南線に乗って地中海までイランが支配することを阻止するためだった。イスラム国が支配したイラク北部のモスールやシリアのラッカは、イランから来る南緯が地中海に到達する陸路の通過点となる。

イスラム国支配といえば、イラク北部のヤジド教徒女性への性暴力が話題になったことを覚えている人も多いだろう。ヤジド教徒のナディア・ムラドさんは2018年にノーベル平和賞を受賞したことがある。

そのヤジド教徒が住むシンジャールの山岳地帯は現在、イラン系ミリシア勢力やイラク政府軍、クルド系ミリシア(民兵)、クルディスタン労働者党(PKK)、トルコ軍などが支配権を争って戦闘を続けているため、たいへん複雑な状況になっている。

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