中東諸国が中国の「一帯一路」を利用する理由 オイルマネー以外の収入を求め中国に接近
そのため、イラクのファオの港に大量のスーパータンカーを寄港できるようにし、パイプラインが地中海にまで延びれば、輸送コストも日数も大幅に減らすことができる。またスエズ運河経由よりもさらに安くなる。
ここが大きなポイントなのだ。例えばイスラエルと国交を正常化させたアラブ首長国連邦(UAE)は、スエズ運河ではなく1960年代にイスラエルの紅海側・エイラートの港と地中海のアシュケロン間に敷かれたパイプラインを復活・利用することを決めている。
2020年にUAEなどアラブ諸国の中からイスラエルと国交を正常化させる国が出てきたが、こういった動きはイランの脅威と中国の一帯一路構想が後押ししたものだ。21世紀の中東・アラブ諸国は、パレスチナ問題で一致団結することはもはやできない。
アラブ諸国への求心力を失ったパレスチナ問題
このように、中国の動きと中東の動きがシンクロすることが目につくようになった。産油国はこれまでのようにオイルマネーで左うちわ、と生きることができない時代になっている。したがって、彼らはどこも石油以外の収入源を確保しなくてはならない。これまで以上に経済を重視せざるをえない中、中国の構想と進出がこの地域に浸透しようとしている。
もっとも、国民感情と政府の動きは別物だ。経済重視でイスラエルと国交正常化はできても、国民同士の関係まで正常化するかは別問題となる。例えば、エジプトは1979年にアラブ諸国の中で最初にイスラエルと国交を結んだ。それでもエジプト人のシャアバーンという歌手が(2019年没)が2000年にリリースした「イスラエルなんか大っ嫌いだ」という歌はエジプトでミリオンセラーの大ヒットを記録した。
この大ヒットはイスラエルにとっては大ショックだったが、今回のUAEやバーレーン、スーダン、モロッコなどとの国交正常化でも、すでに国民感情が揺れている。「政府と私たちは別」「国交正常化に反対」「パレスチナはみんなの味方」といった投稿がSNSに多く見られている。
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