サウジがドバイに仕掛けた経済戦争の真意 中東の経済覇権を狙うサウジの野望から見えるもの
中東に新たな経済戦争が起きようとしている。2021年2月15日、サウジアラビアは外国企業に対し、2024年までに同国内に地域統括本部(HQ、エリア・ヘッドクオーター)を置かなければ、サウジ政府との商業取引を停止すると発表した。外国企業にとって、残された時間は約2年しかない。
ドバイから経済拠点を奪おうとするサウジ
表向きには、この措置でサウジに投資を呼び込み、雇用を創出するためとされている。しかしこの決定は、サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子が主導するものであり、UAE(アラブ首長国連邦)のドバイにある多くの外国企業をサウジの首都リヤドに移転させるための措置だとの見方が支配的だ。
サルマン皇太子は2016年に「ビジョン2030」という経済改革計画を発表した。これは2030年までにサウジが石油依存型経済から脱却して、投資収益に基づく国家経済を建設するというもので、外国からの投資にサウジ経済の門戸を開くことを約束したものだ。
サウジ政府はリヤド北部の「キング・アブドラ・ファイナンシャル・ディストリクト」に59棟もの高層ビルを建てた。ここに誘致した多国籍企業を入居させ、新たな金融地区の中核になることを期待している。同時に、移転した外国企業には①50年間の納税免除、②サウジ国民を一定割合以上雇用する義務の免除、③入札時に有利、④ワーキングビザや配偶者のワーキングビザ取得の要件を緩和、といった優遇措置が約束された。ところが、外国企業は期待したほどには乗ってこなかった。
サウジは中東地域最大の経済力を誇る。それにもかかわらず、サウジと取り引きのある企業のわずか5%未満しかサウジにHQを構えていない。サウジと多額の商取引のある外国企業のほとんどが、ドバイに拠点を置いているのは妥当ではないと考えているのだ。そこで出されたのが、今回の2024年までにリヤドにHQを移さない外国企業との取引は中止するという決定だった。
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