サウジの無謀な行動で急落した原油相場の行方 値下げと2割の増産でロシアにプレッシャー
中東最大の産油国であるサウジアラビアの無謀ともいえる行動が原油価格の大暴落を招いた。サウジは3月7日に同国産原油の大幅値下げを、そして3月10日には、4月に生産量を2割増やし日量1200万バレルにすることを発表した。
これまでOPECプラス(石油輸出国機構とロシアなどの非加盟産油国の会合)での取り決めを超える減産を自らに課してきたサウジが、増産姿勢を打ち出した衝撃は大きかった。需給バランスが大きく崩れるとの見方から、WTI原油先物の価格は一時、30ドルを割り込んだ。
世界景気の減速懸念と、各国で感染が拡大する新型コロナウイルス影響も加わり、年初に1バレル60ドル台だった原油価格は直近で40ドル台まで低下していた。3月5~6日に開かれたOPECプラスは、協調減産で価格回復を図ることが主眼だった。
ロシアの拒否で減産協議がまとまらず
しかし、サウジに次ぐ産油国であるロシアが減産協力を拒んだことで、2017年から続いた協調減産はこの3月末で終了することになった。各国が自由に生産を行えるようになるため、需給の緩みが確実視された。追い打ちをかけるように、サウジが値下げと増産をブチ上げたのだから、価格急落は当然だったといえる。
OPECプラス直後のサウジの豹変について、日本貿易振興機構(ジェトロ)・アジア経済研究所の福田安志・上席主任調査研究員は「原油価格を下落させることでロシア政府やロシアの石油会社に圧力をかけることが目的だ」と指摘。ロシアを協調減産の枠組みに引き込むため、意図的に原油相場を崩しにかかったわけだ。
もっとも、仕掛けたサウジにとって30~40ドル台の原油価格は長く許容できる水準ではない。石油業界関係者によれば、「サウジは原油関連の歳入が全体の7割を占め、財政収支が均衡する原油価格は1バレル当たり80ドル前後」とされる。
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