突如「平和外交」に舵を切ったトランプの思惑 ノーベル賞候補に推薦されて大喜びしているが

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9月に入って2回もノーベル平和賞の候補に推薦されたトランプ大統領(写真:REUTERS/Leah Millis)

トランプ大統領がイスラエルとバーレーンの国交正常化を発表したのは9月11日。だが、同氏はその週だけでノーベル平和賞の候補に2回も推薦された。いずれも北欧の保守政治家によるもので、世界はこの知らせを笑いと無関心をもって受け止めた。推薦を受けたこと自体に大した意味はないからだ。作品を提出したからといって、それで賞が取れるというものでもない。

とはいえ、ホワイトハウスは大喜びしている。トランプ政権は8月にイスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)の国交正常化も仲介している。ノルウェーの国会議員が9日、この功績を理由にトランプ氏をノーベル平和賞の候補に推薦すると、ホワイトハウスのマケナニー報道官はその日の記者会見冒頭でこう述べた。「大統領の多大な努力と名誉にふさわしい」。

そして、11日には2人目の推薦を受ける。推薦したのはスウェーデンの国会議員で、トランプ氏がバルカン半島で激しく対立し合うコソボとセルビアの経済協力を仲介したことを推薦理由に挙げた。FOXニュースの司会者ローラ・イングラム氏は同日夜、自身の番組で次のように驚きを表現した。「トランプ氏のノーベル賞推薦が連日続いている。トランプ氏がノーベル賞を取るのは明らかだ」。もっとも、推薦資格を持つ人は政治家、学者を含め、ほかに何千人といるのだが。

「危険な壊し屋」が偉人の仲間入り?

トランプ氏は全世界から「危険な壊し屋」とみられている。一方、ノーベル賞委員会はこれまで好んでリベラルな指導者に賞を与えてきた。こうした点を踏まえれば、2021年の受賞者が発表される10月にノルウェーの首都オスロからトランプ氏に受賞を知らせる電話がかかってきて、同氏がネルソン・マンデラ、マザー・テレサ、ミハイル・ゴルバチョフ、ダライ・ラマといった偉人たちの仲間入りを果たす可能性は限りなくゼロに近い。

それでも、平和賞の話が頻繁に持ち出されるようになったことで、11月の大統領選挙に向けてラストスパートをかけるトランプ氏の「平和外交」にスポットライトが当たっているのは事実だ。トランプ政権は自らに都合のいい成果を激しく誇張しているとはいえ、最近の平和外交にはそれなりの実体が伴っている。

好戦的なトランプ氏が核戦争を引き起こすのではないかと野党・民主党が警戒していた時期もある。ところが、そのトランプ氏はこのところ、イランや中国といった敵対国に対する脅しをトーンダウンし、紛争を仕掛けるのではなく、むしろ収束を重視するようなスタンスを見せている。

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