テレビの「飲食企業推し」が目に余る切実な訳 まるで「宣伝番組」と化したバラエティの苦境
飲食企業の企画が増えた理由としてやはり大きいのは、コロナ禍の影響。ステイホームが推奨された昨春から、自宅で料理するうえでの食料品や、居住エリアにありデリバリーも可能なチェーン店を扱うバラエティが増えていました。そのことはピザーラ、ピザハット、ドミノピザの3大デリバリーピザチェーンが各局のバラエティで扱われていることが証明しています。いわゆる巣ごもり需要であり、視聴者サービスの意味合いが大きいのは間違いありません。
ただ、これほど増えているのは、理由が1つだけではないから。非常事態宣言によってロケがしづらくなり、批判が集まりやすくなっていることに、バラエティのスタッフは頭を痛めています。その点、飲食企業をベースにした企画は、ロケが最小限で済むほか、批判を受けるリスクが少ないなど安心安全。さらに、内容の大半が既存ネタのため、情報が入手しやすく、取材対応にも慣れているなど、「企画構成と事前手配がスムーズ」という制作上のメリットがあります。
そして、もう1つ大きな影響を及ぼしているのは、昨春に行われた視聴率調査のリニューアル。年齢、性別、人数などの詳細がわかる個人視聴率が全国的に導入されたことで、民放各局はスポンサーの求める10~40代に向けた番組制作を一気に進めました。なかでも重視されているのがファミリー層であり、だから客層と一致し、分母も大きい飲食チェーンの特集が劇的に増えているのです。
日テレとテレ東にはあまり見られない企画
前述した番組は、テレビ朝日、TBS、フジテレビの3局に集中していました。独自路線をゆくテレビ東京はさておき、日本テレビのバラエティが飲食企業の企画に頼ることはほとんどないのです。それはなぜでしょうか?
日本テレビは2010年代から他局に先がけて10~40代に向けた番組制作をしていたこと、これまで飲食企業の企画に頼らず結果を出し続けてきたことなどから、「コロナ禍だから」といって急に採り上げる必要性はないのでしょう。
一方、日本テレビを追いかける3局は、これまで世帯視聴率を獲得しやすい中高年層向けの番組を量産してきたため、視聴率調査のリニューアルによって大幅な方針変換を求められることになりました。「レギュラー番組の中でファミリー層を狙える企画は何か?」と考えたとき、真っ先に挙げられるのが飲食企業の企画だったのです。
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