「最初のロックダウン後、昨年4月に私たちはいくつかのライブ配信をすることを決めました。劇場の業界はとても閉鎖的かつ保守的で、デジタル化に対してはかなり否定的ですが、私たちは2014年に投資をしており、準備はできていました。メインホールにはロボットカメラを設置してありますし、そのほか5台のカメラと監督が1人います。
アーティストは観客を求めており、それは喜劇におけるアーティストに特に言えることです。そこで私たちは、観客の代わりに座席にインタラクティブなモニターを設置して、世界中から(座席に座って)観客として配信に参加する人を20人選んだのです」(デルマスさん)
もちろん、選ばれなかった人もオンラインで配信を視聴できました。配信料は1人10~35ユーロ(再生は不可)。配信はもちろん、本物の観客を前にしたときに感じる情熱や感情の代わりを果たすことはできませんが、ショーの新たな体験方法を提案するだけでなく、世界中のフランス語を話す観客を魅了できる取り組みとなったわけです。
芸術は生で共有されることに基づいている
フランスでは、文化はつねに国の重要な財源として考えられてきました。実際、この国では65万人もの人が文化・芸術分野で雇用されているのです(自動車業界より多いのです!)。
芸術における演出の大部分は、それが観客と「共有」されるという事実に基づいています。美しい彫刻であれ、すばらしい歌声であれ、観客が生で触れることでしか感じ取れない感情があります。
それを「届ける」ことは、文化や芸術に携わる人々にとっては仕事以上のものであり、生きていくうえでまさに不可欠なものなのです。彼らは自らの創造を演奏し、演じ、見せ、そして共有したいと思っており、必要としています。一方の観客側も、精神的バランスを保つため、美術館や劇場、映画館へ足を運び、芸術や文化に生で触れることを必要としているのです。
息苦しい状況が続く中、現文化相のロズリン・バシュローは、美術館や劇場の再開や音楽祭の開催を政府に説得しようと、さまざまな案を模索しています。この夏も野外フェスティバルを行うことを許可したばかりです。参加できる人数は5000人、観客は着席のまま、一定距離を開ける、という制限付きではありますが、これは前向きな1歩でもあります。
営業再開の判断をすることは容易なことではないでしょう。しかし、すべてを閉鎖し、「そのまま」にしておくことは正しい判断とは思えません。「ウイズコロナ」すなわち、ウイルスとともに暮らしていかなければならない状況で、文化や芸術はこれまで以上に大切なものとなっているのです。
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