フランスで起こっている見過ごせない"異変"

コロナ禍芸術が軽視されているこのモヤモヤ感

フランスにおける最初のロックダウン(2020年3~5月)の後、2020年夏まではほぼすべての美術館が営業していました。インターネットによる予約制にしたり、来場できる人数を減らしたり、というシステムも非常によく機能していました。もちろん、外国人観光客が激減していたことで訪れる人も例年を大きく下回っていましたが、それでもフランスに1200ある美術館、そして8000ある歴史的建造物を訪れる人は数多くいました。

苦しんでいるのは美術館だけではありません。映画業界もパンデミックによる影響を大きく受けています。2020年の「カンヌ映画祭」は中止になり、2021年に関しては現在のところ、5月から7月に延期されています。フランスでは10月以降、映画館は閉鎖されたままです。上述の通り、劇場やコンサートホールも閉鎖されたままで、バレエや舞台、音楽祭などは軒並み全公演中止となっています。

「今、必要なのはインタラクション」

文化は「必須ではない」産業なのか――。「必須ではない」と認識されたことの衝撃は、多くの芸術家および芸術関連事業の従事者にとってかなりおおきく、そして屈辱的なものでした。

何が必須か、必須ではないかを決めるのは誰なのでしょうか。私たちが生きていくのに必要なのは食料だけなのでしょうか。それは「生きる」ことの定義ではなく、「生き延びる」ことの定義ではないでしょうか。

「今、私に必要なのはインタラクションです。コンサートへ行き、人々の演劇や歌を生で聴かなければいけません。絵画や彫刻に関しても同様です。芸術は私に力を与えてくれます。この『光』なしに過ごすことは狂おしいのです」。これはフランスの雑誌のインタビューで、女優のキャロル・ブーケが話していたことです。

「国民の健康保護という名目で、すべての文化的生活を禁止するのは普通ではない」と考え、新たな方法で文化や芸術を人々が体験できるような実験を行うところも出てきました。例えば、ルーブル美術館は館内が見渡せるオンラインビューイングやバーチャルツアーなどを始めています。こうした取り組みはパンデミック前にはなかったもので、これは美術館ファンのみならず、従来は美術館に興味がなかった人が美術のすばらしさに触れるきっかけにもなるでしょう。

多くの国と違って、フランスには芸術業界に従事する人(intermittents du spectacle=芸術分野における非正規労働者)を保護する特有のシステムがあり、こうした人々は無職期間中に一定の手当てを受け取ることができます(受け取るには、前年最低507時間の労働実績が必要です)。政府はすべての休業に対する補償を8月末まで延長すると決めており、これは芸術家が収入を維持するうえでは大きなことです。

もっとも、文化や芸術に携わる人々は収入があればいい、というわけではありません。4つのホールを持つパリのアポロ劇場の理事であるマイダ・デルマスさんは、漫談師や一人芝居をする役者などがいかにコロナ危機に立ち向かったかをこう語ります。

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