ガイトナー米財務長官への辞任圧力がしだいに強まる、金融改革実行こそ優先課題
米国のオバマ大統領はガイトナー財務長官を引き続き強く支持しているものの、議会、世論の辞任圧力がしだいに強まっている。特に最近の下院議会では共和党議員だけでなく、民主党議員からも同長官に強い非難が浴びせられた。2008年の金融危機の際、大手金融機関に対して政府は過剰な優遇をしたのではないかという疑いを持つ選挙民の声が強まっているからだ。
オバマ大統領は金融システム改革が最優先政策の一つだと再三述べており、ガイトナー長官はその先導役と見なされている。しかし、同長官はニューヨーク連銀のトップだったとき、金融危機のさなかに政府支援をするかどうかでもめた巨大保険会社AIGに対する支援を取りまとめるのに一役買ったというのだ。
強力なゴールドマン人脈
最近、AIG支援によってウォール街の大手金融機関ゴールドマン・サックス(GS)が利益を大いに享受したとの報告が出た。ガイトナー長官は、GSの経営トップだった元財務長官のロバート・ルービン氏の強力な引きによって現在の地位を勝ち得たといわれる。同長官を支える主任スタッフのマーク・パターソン氏もGS出身で、同氏が07~08年に同社役員だったときにAIG破綻が表面化し、その政府支援によってGSは大いに救われたというのだ。
パターソン氏は元民主党院内総務のトム・ダシュル氏の政策担当部長でもあった。ダシュル氏は、所得税法違反などが発覚する以前には、オバマ政権の重要な経済顧問と目されていた。また、パターソン氏の妻はSEC(証券取引委員会)の政策実行部門のトップ。SECは例のバーニー・マードフ氏の“ネズミ講”スキームを見逃していた機関である。
こうした状況は、金融規制をする側とされる側との怪しい関係を疑わせる。民主党とウォール街との関係も、その政治資金調達という関係で疑われ、特にGSはその出身者の多くが政府の重要なポジションについている点で問題にされている。