ガイトナー米財務長官への辞任圧力がしだいに強まる、金融改革実行こそ優先課題
現在、オバマ政権が進めようとしている金融改革は、クリントン政権時代の規制緩和を見直そうというもの。その規制緩和はルービン元財務長官の下で行われ、副長官はラリー・サマーズ氏、その下にガイトナー氏がいた。サマーズ氏はオバマ大統領の側近の経済顧問となっている。同氏は安全地帯にいると思われているが、GSの関係者たちは政治的に難しい立場に立たされている。
ガイトナー氏は忠実な公務員だが、彼が先導したAIG政府支援によってGSなど金融機関は大きな利益を享受したのに対し、AIGの保険契約者は不利益を被ったという非難の矢面に立たされている。GSなど大手金融機関は金融危機を乗り切ったが、一般の人々は50年ぶりの大不況にあえいでいるというのだ。
ガイトナー氏は金融バブル期に金融業界と深くかかわってきたため、オバマ政権が取り組もうとしている改革をリードすることはできないのではないかともいわれている。同氏はNY連銀総裁として、金融システムを監視する役割ではグリーンスパン前FRB(連邦準備制度理事会)議長に次ぐポジションにいたのだから、AIGと関係した多くの金融機関を監視する立場にあったのではなかったかという批判である。
ガイトナー氏は金融政策の誤りを認めているが、彼自身がグリーンスパン、ルービン、サマーズ各氏とともに金融バブルを引き起こした規制緩和政策に一役買ったという立場から逃れることはできない。
中間選挙を控え、金融支援に怒れる選挙民の票をつなぎ留めようと躍起になっている政治家には、ガイトナー氏の過去の誤りに対する謝罪やその後の忠勤ぶりだけでは不十分のようだ。彼らは生け贄の羊を求めており、ガイトナー氏がその役割を担わされる可能性が高まっている。
下院議員が求めているのは金融機関の信用回復だ。金融機関の役員たちの巨額の報酬や、伝統的な融資をする商業銀行とリスクを取る投資銀行の区別などの規制が必要なことは確かだが、それを主導する財務長官には、金融システム破綻を招くような政策とは何の関係もない人になってもらいたいというのである。