すぐに「ググる人」が陥る思考力低下という盲点 批判的思考・問題解決力・創造力への深刻な影響

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10代になるころ、初めて親に頼らずに考えて自分の意見を言ったときのことを覚えているだろうか。それはとても解放的な経験だっただろう。生まれて初めて、心から自分自身になれたと感じたかもしれない。いったい何があなたに起きたのか。もちろん、あなたの批判的に考える力が発達して、推論を使って人生を歩めるようになったのだ。

だったらなぜ、この自分を解放してくれるスキルを端末に譲り渡そうとするのか。考えてみてほしい。だれかに考えを押しつけられたら、どんな気持ちがするか。家族か友人か同僚がやって来て、「考えるな、お前の意見はこれだ」と言ったら、なるべく早くその人から離れようとするだろう。

情報をくれるデジタル端末にすぐ手を伸ばすとき、僕らは本質的にそれと同じことを招いている。

生産性や心の平温を乱すSNS

デジタル環境がもたらす思考力の低下は、僕らが最も気合いを入れて挑むべき強敵だ。しかし注意したほうがいいデジタルな脅威はもう1つある。僕はそれを「デジタルうつ」と呼んでいる。他人のSNSの充実した投稿を見て劣等感を抱くときに現れる、行きすぎた比較文化の影響のことだ。

今の僕はSNSを楽しんでいる。アカデミーの生徒やポッドキャストの視聴者と楽しくやりとりし、家族や友人の日々の投稿も楽しく見ている。娯楽の種として、また教育やエンパワーメントにつながるものとしてありがたく使っている。

SNSを使うときは、生産性や心の平穏を乗っ取られないように、習慣からなんとなく使うのではなく、意識的に、調和の取れた方法で使うことをお勧めする。

われわれがデジタル環境から完全に離れて生活することは、現代社会では極めて困難だ。だがデジタルがもたらす思考力の低下や「デジタルうつ」を回避するためには、時にはそれらに依存せず、意図的に自分の頭を駆使することを心がけるべきだ。

たとえば今から、決断しなければならないことを1つ思い浮かべよう。そして、少し時間を取って、デジタル端末を使わずにその決断に取り組んでみてはどうだろう。

ジム・クウィック ブレインコーチ

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Jim Kwik

記憶力の改善、脳の最適化、加速学習の分野で知られる世界的エキスパート。幼少期に負った脳損傷により学習困難に悩まされるも、脳のパフォーマンスを劇的に高める手法を開発。以来、人々の真の能力と脳力を引き出す手伝いに人生を捧げている。脳コーチング歴20年以上。学生、高齢者、起業家、教育者から、ハリウッドの大物、プロスポーツ選手、政治主導者、ビジネス界の重鎮、法人顧客(グーグル、ヴァージン・グループ、ナイキ、ザッポス・ドットコム、スペースX、ゼネラル・エレクトリック、20世紀フォックスほか)、国際連合、カリフォルニア工科大学、ハーバード大学、シンギュラリティ・ユニバーシティなどの機関まで実績は多岐にわたる

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