昼夜問わず「スマホを使い続ける生活」の大弊害 なぜ「メンタル不調に悩む日本人」が激増したか

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逆にいえば、「新しい生活様式」のもとでも、セロトニン神経をうまく活性化させる工夫ができれば、私たちは「ストレスフリーな脳」を手に入れることができ、不安に振り回されることがなくなるのです。

もちろん、家にひきこもっていても、なんとか生活を維持できているのは、デジタル技術の発達のおかげです。家にいながらにして、仕事、買い物、情報収集、友人とのやりとり、そして遊びに至るまで、手元にあるパソコンやスマホでできるようになりました。それですべてができるのですから、すばらしい発明であることは間違いありません。

『脳科学者が教える「ストレスフリー」な脳の習慣』(青春出版社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

しかし、その便利さが諸刃の剣となり、セロトニン神経を弱らせる原因となっています。そして、セロトニンがきちんと出ない生活を続けていることが、イライラを引きずったり、睡眠の質を低下させたりといった状況を生み出す理由にもなっています。

かといって、デジタル機器なしでは仕事も生活もできないことは明らかです。重要なことは、パソコンやスマホとのつきあい方を学ぶことです。これが、現代人にとってストレスフリーに生きるための急務といってよいでしょう。

「常にスマホをいじる生活」の弊害

私たちは、朝起きてから夜ベッドに入るまで……、いやベッドに入ってからもスマホをいじる生活にどっぷりとつかってしまいました。これは、大昔から生きてきた人間の営みからすると、とんでもないことなのです。

昔の人間は、太陽が出ると外に出て体を動かして、狩りをしたり畑を耕したりしていました。汗水たらして、体を動かして、太陽も浴びるというのは、セロトニン神経が自然に活性化される暮らしです。そういう生活の中で、人間は1万年以上も生きてきたのです。そんな暮らしが、つい20年ほど前まで続いていました。

ところが今は、机の前に座りっぱなしで何でもできるようになりました。太陽の光を浴びず、体もほとんど動かさない。それでも仕事がきちんと成り立ち、お金が入るという便利な社会ができ上がりました。

コロナ以前は外出や通勤が気分転換や運動になる面もありましたが、コロナ禍ではそれもできなくなってしまいました。それでは、セロトニン神経を活性化するいとまがありません。ストレスはただたまる一方になってしまったのです。

ストレスが加われば、コルチゾールと呼ばれるストレスホルモンが副腎皮質から分泌されることはよく知られています。同時に、セロトニン神経が抑制されてしまうこともわかっています。つまり、ストレスが加わることでセロトニン神経が弱り、結果としてストレスに押しつぶされやすくなってしまうわけです。

有田 秀穂 医師・脳生理学者

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ありた ひでほ / Hideho Arita

医師・脳生理学者。東邦大学医学部名誉教授。セロトニンDojo代表。1948年東京生まれ。東京大学医学部卒業後、東海大学病院で臨床、筑波大学基礎医学系で脳神経系の基礎研究に従事、その間、米国ニューヨーク州立大学に留学。東邦大学医学部統合生理学で坐禅とセロトニン神経・前頭前野について研究、2013年に退職、名誉教授となる。各界から注目を集める「セロトニン研究」の第一人者。メンタルヘルスケアをマネジメントするセロトニンDojoの代表も務める。

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