第2の同盟「日豪」協調がますます求められる訳 ともにインド太平洋フュージョンを深めよ

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日豪はACSA(物品役務相互提供協定)、GSOMIA(軍事情報包括保護協定)、防衛装備品・技術移転協定を結び、2プラス2(外務・防衛閣僚会合)を行っている。日米同盟のような条約に基づく同盟関係ではないが、いわば準同盟的な関係を持つパートナーである。日本にとっては、イギリス、カナダ、フランス、インドもこのような準同盟国であるが、日豪両政府は昨年11月、相手国を訪問する兵士の刑事裁判権を含む法的地位を明確にする日豪円滑化協定(Reciprocal Access Agreement=RAA)で大筋合意し、さらに関係を深めている。これによって両国部隊間の相互運用性を改善することが期待されている。

すでに連携は始まっている。2011年3月の東日本大震災のときには、オーストラリアは輸送機C-17を横田米軍基地に派遣し、日本への災害支援をした。2020年1月、オーストラリアの大規模森林火災の際、日本は輸送機C-130Hを派遣、リッチモンド空軍基地を拠点に、消火活動にあたるオーストラリア軍の兵士の輸送を行った。

また、同年11月、インドのマラバル海で行われた日米印の海上軍事演習にオーストラリアが13年ぶりに加わった。円滑化協定はこうした日米豪防衛協力をより確かなものにする。一刻も早い、締結が望まれる。日本は、安倍政権時代、同盟国として求められる集団的自衛権を行使できる――部分的ではあるが――法体制を整えたが、日本政府はアメリカのほかオーストラリアも重要影響事態において防衛する対象国とみなしている。

アジア太平洋の経済連携をともに推進

経済面でも、日本とオーストラリアはアジア太平洋の経済連携の動きをともに推進してきた。日本は、ASEANプラス3(日中韓)にオーストラリア、ニュージーランド、インドを迎え入れてEAS(東アジアサミット)を設立した際に先導役を果たした。2014年、安倍晋三首相がオーストラリアを訪問した際には日豪EPAに調印した。

さらにトランプ政権になり、アメリカがTPPを脱退した後のCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)の締結に向けても協調した。トランプ政権のアメリカがアジアにおけるこれらの多角的協議に背を向け、アメリカのプレゼンスが希薄になる中、日豪両国は自由で開かれた国際秩序を維持し、発展させるため協力してきた。

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