二重苦に直面する患者たち
がん研有明病院(東京・江東区)はベッド数686床、国内トップクラスの手術件数を誇り、ほかの病院で治療が難しいケースなども対応する、がん診療の最後の砦ともいえる。同病院にとって、感染症は専門外だが、去年12月に、約40床の病棟を新型コロナ専用にした。それほど東京都内では、新型コロナ対応の病床不足が深刻化していたのである。
──新型コロナへの対応が最優先になり、その弊害が生じていますか。
がんは検診によって早期発見、早期治療することが大原則ですが、これが大きく揺らいでいます。コロナ禍によって、当院でも一時期は、がん検診がストップしましたし(現在は再開)、昨年から、がん検診を受けない人が多くなっています。そうすると、がんの早期発見が遅れて、進行してしまうケースが水面下で起きているはずです。今後、この影響が表面化してくるだろうと、当院の医師たちは危惧しています。
──がん患者に新型コロナが与えている影響については?
治療を優先すべきなのか、コロナの感染リスクがあるから家にいたほうがいいのか、がん患者の心は揺れています。
とくに血液がんの患者や肺がんの患者は、コロナに感染すると重症化リスクが高いと認識しているので、「治療もしなければいけないけれど、病院に来るのも非常に怖い」という声を、第1波のときにたくさん聞きました。
昨年12月、当院にコロナ病棟ができた当初は「がん研に行くと、コロナに感染するのではないか」と誤解された患者もいました。コロナ病棟は100%ゾーニングする(感染リスクのある領域と、非感染領域を明確に区分けすること)など、徹底した感染対策を行っていますので、院内感染は考えられませんが、根拠もなく悪い想像をしたのでしょう。最近は緊張を感じながらも、コロナより、がんの治療や検査を優先する患者が多くなってきました。
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