──終末期のがん患者が、コロナの影響を受けていると聞きます。実際はどうなのですか。
他院の一部の緩和ケア病棟が、コロナ専用病棟に転換されていると聞きました。終末期のがん患者の中には、安心した医療を受けられるのか、最期に自分は苦しむのではないか、という不安や恐怖感が増幅しているのではないでしょうか。
当院の緩和ケア病棟は閉鎖していませんが、新型コロナの影響で今までと同じ運用ができなくなりました。最期の時間を患者が家族とゆっくり過ごす、という使命が緩和ケア病棟にはありますが、コロナの感染予防のために苦渋の選択ですが面会制限をするようになりました。
在宅を選ぶ患者も多くなりましたが、介護やご家族に余力がないときはそうもいきません。最期の時間、大切な人が孤独感を感じながら亡くなっていったという後悔は、家族にとっても大きな心の傷として残っていくでしょう。
不安の正体とは何か
──清水先生が所属する、「腫瘍精神科」の役割とは?
当院の各診療科では、医師や看護師が心のケアをしていますが、その中でとくに不安が強いとか、悩みが深いという患者が、腫瘍精神科に紹介されます。コロナ禍で日々の不安緊張が高いですし、発散する方法が限られているので、がん患者にはストレスが蓄積しています。
コロナに感染してしまうのではないか、という不安が非常に強くて、病院に来られなくなった患者もいます。がんを抱えているうえに、コロナに感染すると死んでしまう、という恐怖感が募ってしまったようです。家族が当院に連れてきたときは、おびえたような表情をしていました。
不安の高まりで日常生活にも支障が出てしまう「不安障害」でしたので、セロトニン(神経伝達物質)に作用するお薬を投与しました。すると、週単位で改善がみられて、3週間後の診察では笑顔がでるようになりました。
──がん患者の不安に、どのように対応していますか。
患者が感じている怖いこと、不安に思っていることを、まず言葉にしていくことから始めます。不安は人によって千差万別で、個別性が高いものです。だから私が理解者として、不安をちゃんと受け止めるようにします。
そうすると、患者は自分の不安を理解してもらうだけで、安心することもありますし、何が怖いのかわからずにモヤモヤしていることが明確になります。怖いものに対して準備するのは一般的な感情であって、必ずしも悪いものとか異常なものではない。「あなたが不安を感じるのは当然です」ということを伝えます。
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