コロナ後に来るべき人間や環境にやさしい社会 「参加と協働」が生きる社会へ変われるか

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2021年の現在は、1989年に始まるといっていいだろう。国家主義的冷戦時代が終わり、国家を乗り越えるグローバルな社会が始まった年であり、それはソ連や東欧の国家主義的社会主義体制を破壊し、西欧においても国家主義から自由主義を生み出し、国家を越える国家連合組織を生み出し、国家をまたぐグローバルな企業をつくりあげていった。それはほぼ30年にわたる過程であった。

現在の変化を見ると、ある特徴的な事実に気づく。それはあらゆる政策が国家権力の独占ではなくなり、大衆に移管されていったことである。1960年代から始まる民衆の下からの運動は、人種差別、男女差別、権力者による支配などを粉砕し、国家権力を牛耳る大資本や権力政党の根幹を崩し始めた。

国家による民衆への福祉が不可能な時代に

これによって、冷戦構造の中で生き続けた国家主義的組織が危機を迎えることになる。ソ連や東欧では共産党独裁体制が機能不全に陥り、自壊せざるをえなくなったこと。そして、西欧においても国家主導による組織が機能不全に陥ることになったことである。

こうして、ソ連型の国家社会主義や、西欧の福祉国家型の資本主義が立ち行かなくなる。国家主導による経済成長がこうした社会を支える力であったのだが、民衆の意志の反映されない国家において次第に成長は鈍り、国家による民衆の福祉などできなくなったのである。

第1次世界大戦前の古典的自由主義に代わって新自由主義が登場するが、機動力という点、グローバルという点、短期的経済成長という点で効果を発揮した。しかし、バブル経済を創出し、リーマンショック以後は停滞したままである。しかも、この30年国家が担ってきた福祉制度を自由化したことで、リスク管理のない社会を創り出し、大震災やパンデミックなどの現象にはまったく太刀打ちできなくなっていたのである。 

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