コロナ後に来るべき人間や環境にやさしい社会 「参加と協働」が生きる社会へ変われるか

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現在直面している問題は、この30年間で問題になってきた民衆主体による国家機構の変革が実現できないまま、国家が機能不全に陥ったこと、そのため国家が社会保障制度で何とか解消してきた差別が再登場し、きわめて弱い立場の人々がその負債を背負いこんでしまったことである。

確かに人類史において、民衆が豊かになることは重要な進歩だといえる。ごく一部の人々だけの豊かさを人類全体の豊かさに帰すというのは、人類の希望でもあった。しかし、最初は少数の者、次第に多数の者が物的豊かさを享受するという理想は何度も踏みにじられ、そのたびに新しい社会を目指す運動が生まれた。

ある意味資本主義も社会主義も、その運動の1つであった。一人一人の利己心が最終的に全体の豊かさにつながるということも、国家統制による組織化と平等主義が少ない物的資源を平等に分配できるということも、実は限りある地球上の環境の中でのみ実現できることである。

資本主義体制の中で地球を守ることができるのか

「必要に応じた分配から欲求に応じた分配」という言葉は人類の夢であるが、これほど発展した現在においてもそれは不可能だし、今後も不可能であろう。豊かにならねばならないのは、人間だけでなく、地球に住むすべての生き物なのかもしれない。すべてが地球という運命共同体の一員になってしまったのである。

人々はもう気づき始めている。限られた地球環境の中で無限の豊かさは不可能であるばかりでなく、無意味であることを。再生可能という言葉はすべての生命にとってキーワードである。

しかし、今の資本主義体制で地球を守ることができるのか。図らずもコロナ下で、不要不急という言葉の下で、「無駄なものはいらない」という意味を理解したはずである。自宅で謹慎しながらも、久しぶりに自然が帰ってきたようなみずみずしい季節感を感じるのはなぜであろうか。窮屈な背広やネクタイを放り出し、化粧もせずに、普通の自分に戻って生活することが、なぜこんなに楽しいのか。

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