TBS「天国と地獄」独り勝ちに抱く違和感の正体 入れ替わりは大人向けのドラマと言えるのか

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また、2013年の「とんび」(TBS系)はNHK版のわずか1年後に放送、同年の朝ドラ「ごちそうさん」(NHK)は「あまちゃん」直後であり、食べ物をテーマに半年間の長期放送、2015年の「天皇の料理番」(TBS系)は35年ぶりのリメイク、2017年の大河ドラマ「おんな城主 直虎」(NHK)は史料がほとんどない井伊直虎が主人公の物語、2018年の「義母と娘のブルース」(TBS系)は4コマ漫画を連ドラ化と、いずれも無茶振りのような難しい仕事を成功させてきました。

森下さんは日曜劇場でも前述した「とんび」「天皇の料理番」を手がけ、どちらも幅広い世代が楽しめるヒューマン作として人気を獲得。つまり、ファンタジーに頼らなくても、名作を手がけられる人なのです。ちなみに「JIN-仁-」は、原作が村上もとかさんの名作漫画だけにタイムスリップの必然性がありましたが、オリジナルの「天国と地獄」に入れ替わりというファンタジーを採り入れる必然性はないでしょう。

最大の問題は、「これくらいわかりやすくしないと見てもらえない。視聴率は獲れない」という基準でドラマ制作を続けていくと、実力のある脚本家ほどテレビから離れがちになってしまうこと。たとえば、現在ヒット中の映画「花束みたいな恋をした」を手がけた坂元裕二さんは3年、業界内で「実力ナンバーワン」とも言われる古沢良太さんも3年、連ドラの脚本を書いていません。

また、今冬はヒット作が多く実績十分の福田靖さんと橋部敦子さんが、ゴールデン・プライム帯ではなく深夜帯でオリジナル作を手がけています。さらに言えば、森下さんも昨年、深夜帯でオリジナル作を手がけていました。

このように優れた脚本家ほど「連ドラから離れる」、あるいは「深夜帯しか書きたいものが書けない」という状態は、視聴率偏重でドラマにわかりやすさばかりを求める民放各局の問題点を暗示しているのです。

綾瀬と一生の入れ替わり演技は上手い?

ツイッターなどを見ていると、「綾瀬はるかの演技が凄い」「高橋一生が上手すぎる」などの声をよく見かけますが、そのような見方は本当に正しいのでしょうか。

当作のような入れ替わりの物語を放送すると、大半のケースで称賛の声が挙がりますが、俳優本人たちに言わせれば、「絶賛を集めるほどではない」「ほめられるとかえって恥ずかしい」と思っているもの。そもそも入れ替わりで称賛されるのは、仕草や振る舞いであることが多く、演技全体の一部分にすぎず、俳優としての満足感は低いそうなのです。

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