TBS「天国と地獄」独り勝ちに抱く違和感の正体 入れ替わりは大人向けのドラマと言えるのか

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「天国と地獄」の第1話を見たとき、ある結末が猛批判を招いたドラマを思い出しました。その作品は2017年に放送された「愛してたって、秘密はある。」(日本テレビ系)。同作は殺人事件をめぐる長編ミステリーであり、黒幕予想などで終盤は多いに盛り上がりました。しかし、最終話で黒幕が主人公の別人格であることがわかると、「何でもアリなのか」「それは禁じ手だろう」などと怒りの声が挙がったのです。

その「何でもアリ」という点では、入れ替わりも別人格と同じ。「天国と地獄」が放送前の段階から「何でもアリ」と伝えていたのに対して、「愛してたって、秘密はある。」は最終話で伝えたという違いがあるだけです。最初から「何でもアリ」とハードルを下げておくか、ジワジワとハードルを上げて最後に「何でもアリ」と伝えるか。同じ「何でもアリ」の設定でも、称賛と批判は紙一重であることがわかるでしょう。

ただ、最初から「何でもアリ」とハードルを下げたことで懸念されるのは、今後の展開について。彩子と日高が入れ替わったということは、他の登場人物たちも入れ替わっていたとしても不思議ではありません。そもそもファンタジー作は、「どんな設定が加わり、どんな展開になるのもアリ」という申し開きを前提にしたものなのです。

ゆえに最初から「何でもアリ」と視聴者に伝えておく作品は、作り手にとって便利である反面、視聴者にとっては「それはナシでしょ……」とがっかりさせられる可能性があるということです。

名脚本家に「入れ替わり」は不要

「天国と地獄」に違和感を抱いてしまうもう1つの理由は、名脚本家・森下佳子さんに、「何でもアリ」「禁じ手」とも言われる入れ替わりの物語を書かせていること。森下さんは難しい状況をはね返して名作に昇華させる名手で、これまで何度となく視聴者を感動させてきました。

その名前が広く知れ渡った最初の作品は、2004年の「世界の中心で、愛をさけぶ」(TBS系)。すでに映画が大ヒットし、ネタバレした状態の中で周囲の人々を絡めた人間ドラマを描き、称賛を集めました。2006年には「実写化不可能」と言われた「白夜行」(TBS系)を大胆な脚色でヒット作に、2009年と2011年にはタイムスリップ時代劇「JIN-仁-」を世界的なヒット作に昇華。

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