TBS「天国と地獄」独り勝ちに抱く違和感の正体 入れ替わりは大人向けのドラマと言えるのか

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そもそも俳優は他人を演じる仕事であり、当作で言えば、それが「異性というだけ」のこと。多くの俳優は、「入れ替わりの演技くらい当たり前のようにできなければいけない」と思っています。綾瀬さんも高橋さんも、これまでに難役と言われる仕事を経験していて、当作以上に演技力を発揮しているでしょう。

実際、ネット上で高橋さんの熱心なファンの声を拾ってみると、「うまい」「かわいい」という声こそ多いものの、それ以上の絶賛はあまり見られません。むしろ、「こういう演技が見たいわけじゃないんだけどな……」という声もあるように、よく見てきた人ほど「高橋一生の演技はこんなもんじゃない」と思っているのではないでしょうか。

視聴者にしてみれば、男女の入れ替わりは見慣れていない分、新鮮な驚きがあるでしょう。しかし、前述したようにわかりやすさを前提にした物語だけに、ここまでは「俳優の演技力を引き出している」とは言い切れないのです。

出口は大人も感動できる展開を期待

最後に「天国と地獄」の視聴率を見て今後を占っていきましょう。

第1話が個人10.1%・世帯16.8%、第2話が個人8.7%・世帯14.7%、第3話が個人8.6%・世帯14.1%、第4話が個人8.2%・世帯13.4%。高水準が続きながらも、ジリジリと下がっているのが気がかりですが、多くの謎を見せてネット上の「考察合戦」をあおっているため、終盤に向けて再び浮上する可能性が高そうです。

あらかじめ公式ホームページ上で、「人生が逆転した2人の愛と運命が交錯する」「2人の魂が入れ替わった先には、互いの価値観を根底から揺るがす、予想もしない真実と“究極の愛”が待っていた」と予告されているだけに、クライマックスに向けてドラマティックな展開が見られるでしょう。入口はわかりやすさ重視の幼い設定ではあるものの、森下さんの脚本なら、出口は大人も感動できる名作に昇華させているのかもしれません。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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