都市の温室効果ガス排出量「超過小報告」の実態 なんと90%過小報告している都市もあった

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今回の研究は、48の都市が自己申告した二酸化炭素排出量を検証したもの。工場、発電所、国勢調査地域、交通・道路情報など、主に一般公開されている連邦データから推定した二酸化炭素排出量と比較した。その結果、各都市が排出量を平均18.3%過少報告していることがわかった。

一部の都市は排出量を大幅に低く見積もっていた。例えば、クリーブランドが報告した排出量は、研究者らの推定値より90%も少なかった。反対に、研究者らの推定値より過大に排出量を報告していた都市もある。約42%も数値を大きく見積もっていたカリフォルニア州パロアルトがそうだ。

これらの誤差は、おそらく単なる計算違いから生じているとガーニー氏は話す。「組織的または意図的に過少計上しようとしているわけではないと思う」。中には排出量を正しく見積もっている都市もあったが、「正しい理由から正確な数値となったのか、間違った理由から正しい数値となったのかについては、なんとも言えない」という。

メタンの排出量も過小に見積もられている

ガーニー氏らの研究は、アメリカ国立標準技術研究所から資金提供を受けており、同研究所所属の科学者キンバリー・ミューラー氏も論文の共同執筆者の1人となっている。同研究所で温室効果ガス測定プログラムを担当するジェームズ・ウェットストーン氏は同研究を、都市から排出される温室効果ガスの適切な計測に向けた「重要な一歩」だとした。

ミシガン大学、ハーバード大学、連邦政府の研究者による先行研究では、もうひとつの強力な温室効果ガスであるメタンの排出量も多くの都市で過少に見積もられていることがわかっている。ガーニー氏は「どちらのガスについても、一貫した計測アプローチが求められている」と話す。

各都市のこれまでの取り組みは称賛に値するものだったとはいえ、「道具立てが追いついていなかった」とガーニー氏。「都市の多くは財政難でゴミ収集や道路補修にも苦労している。排出量についての細かな報告にまで力を避ける状況にはない」。

都市の温室効果ガス排出を減らすには、渋滞する幹線道路や排出量の多い産業など、大きな問題点がどこにあるのかをしっかりと理解する必要がある、とガーニー氏は指摘する。問題が特定できれば、行政はそこに集中的に対処することで、政策の費用対効果を高められるからだ。

(執筆:John Schwartz記者)
(C)2020 The New York Times News Services

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