ワクチン「変異種治験」で浮上した不穏な現実 南アでアストラゼネカ製接種中止になった意味
南アフリカはイギリスのアストラゼネカがオックスフォード大学と共同開発した新型コロナワクチンの使用を中止した。南アフリカで最初に確認された感染力の高い変異ウイルスに対して臨床試験(治験)を行ったところ、軽度〜中等度の症状を防ぐ効果のないことが判明したためだ。
南アフリカの新型コロナ対策を激しく揺さぶる治験結果といえる。
現地科学者の2月7日の説明によると、従来型のウイルスに感染した人にも同様の問題が見られた。南アフリカで感染が広がる変異ウイルス「B.1.351」に再感染した場合、従来のウイルス感染で自然に獲得した免疫では、おそらく軽度〜中等度の症状は予防できないという。
早くも損なわれたワクチンの効果
100万回分のアストラゼネカ製ワクチンが南アフリカに到着してから、わずか1週間で発覚した今回の事実は、同国にとって大きな打撃だ。新型コロナによる南アフリカの死者数は、すでに4万6000人を突破している。この事実はまた、変異の脅威を一段と裏付けるものでもある。B.1.351の変異ウイルスは少なくとも32カ国に拡散し、そこにはアメリカも含まれている。
現地科学者が7日に発表した研究概要からは、重症化を防ぐ効果があるのかどうかははっきりしなかった。検査を受けた治験参加者は比較的若く、重症化リスクが低いため、重症化や入院・死亡を予防する効果が損なわれたか確定することはできなかった。
ただ、被験者の血液サンプルに見られた免疫反応からすると、重症化を防ぐ効果はまだ残されている可能性があるという。南アフリカの公衆衛生当局者は、今後の研究で有効性が確認されれば、アストラゼネカ製ワクチンの使用再開を検討すると語っている。