ワクチン「変異種治験」で浮上した不穏な現実 南アでアストラゼネカ製接種中止になった意味

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これはワクチンの有効性が10%にとどまっていることを意味する(ただし、より多くの人々が接種した場合にも同程度の有効性となるかどうかは、まだ統計的に断定できる状況にはない)。

アストラゼネカとワクチンを共同開発したオックスフォード大学の研究者らは7日、B.1.351による軽度〜中等度の症状について同ワクチンは「極めて限定的な予防効果」しかもたらさなかったことを認めた。目下、B.1.351系統の最も危険な変異に対しても有効なワクチンを開発中で、秋までには利用できるようにしたいとしている。

接種が進んでも感染を広げる方法見つけ出す

「パンデミックを引き起こしている新型コロナウイルスは、ワクチンの接種が進んだとしても感染を広げる方法を見つけ出す。以前から予想されてきたことが、今回の治験によって裏付けられた」と、オックスフォード大学のワクチン開発責任者アンドリュー・ポラード氏は声明に記した。

「ただ、(アストラゼネカ/オックスフォード大学のワクチンと種類的に)同じウイルスベクターを用いた南アフリカでの他の研究からは期待できる結果がもたらされている。ワクチンは今後とも重症化を防ぎ、医療への負荷を軽減してくれる可能性がある」(ポラード氏)。

モデルナも、追加接種(ブースター)によって南アフリカで広まる変異ウイルスに対抗するワクチンの開発を進めているところだ。

 B.1.351は南アフリカではすでに新型コロナ感染の主流となっており、数十カ国・地域に広がっていることが確認されている。

(執筆:Benjamin Mueller記者、 Rebecca Robbins記者、Lynsey Chutel記者)
(C)2021 The New York Times News Services

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