野球界が今になって「指導者資格」導入の危機感 山中正竹氏に聞く日本野球の未来像(上)

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日本スポーツ界ではとくに「暴力指導」の問題が、今もたびたびクローズアップされているが?

「スポーツ部の暴力指導の問題は、大阪市立桜宮高校のバスケット部の事件をきっかけに社会問題化しました。そのときに法政大学でスポーツをしている学生にアンケートを実施しました。すると回答者の内30%に近い人が一部にせよ『暴力肯定』論者でした。何とも寂しい話だと思いました。彼らが暴力に肯定的なのは、中学、高校で暴力的な指導を受けた経験があるからでしょう。

大学まできてスポーツを続けている人はその道の成功者です。“あの高校、中学のあの先生の厳しさがあったから今の自分がある”と思っているのだと思います。つまり『厳しさ=暴力』というふうにとらえているから暴力を否定できない。

もちろん、勝負、競技には鍛錬が必要です。メンタルや技術を磨き、競技力を高めて相手と戦う。監督は選手と一緒になって勝利を目指します。私は監督も選手と同様、重要な戦力だと思っています。監督が判断を誤ったり、起用を間違えたりすれば勝ちを逃すことがある。

つまり選手と監督は、ともに勝利を目指す仲間であり、対等な立場でお互いに信頼関係を持ち、リスペクトし合う関係なんです。これがスポーツの根源的な要素だと思います。

今でも日本のスポーツ界では往々にして、監督が上から目線で“俺の言うことを聞け、聞かないものは試合に出さない”という風潮がありますが、これは昔の富国強兵策から軍国主義時代の考えが続いているんですね。上官の暴力に耐えるのが強い兵隊さんだったのですが、戦後もその価値観が残っていたわけです」

野球部が勉強するのは「当たり前」

昔の厳しい指導について武勇伝のように話す人が今もいる。山中氏はこれにも疑問を呈する。

「よく、昔の野球の暴力体質の話が面白おかしく誇張されて伝わってきますが、そんな中でもいちばん嫌なのは“俺たちの時代は学校行かなくてもよかったんだ”“教室への行き方がわからないままだった”みたいな話ですね。

これをOBの一部の人が今の学生の前で言うのには、憤りを感じます。それを聞けば、今の学生は“あの人たちは先輩じゃない”“尊敬できない”と思うでしょう。野球部であっても若い頃から勉強しなくてはならない。当たり前のことです」

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