野球界が今になって「指導者資格」導入の危機感 山中正竹氏に聞く日本野球の未来像(上)

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日本サッカー協会の傘下でJリーグからアマチュアサッカーまでが一枚岩のサッカー界とは対照的に、日本の野球界は、プロ、アマ、学生、社会人などさまざまな組織が乱立し、統制がとれない状態と言われる。それがライセンス制度の普及や、野球界挙げての振興活動の障害になっていると言われている。

統率が難しい日本の野球界

「BFJの会長になるときにJリーグ初代チェアマンの川淵三郎さんから、“お前の時代に野球界をサッカーみたいな形にしろよ”といわれました。でも私は“そんな簡単なことじゃないんですよ”と言った。

日本サッカーは1968年のメキシコ五輪で銅メダルを取ったときを頂点として人気が下落し、日本リーグの試合でさえ選手の親戚しか見にこないような状態になりました。そこからの立て直しに、若かった川淵さんが起用されて、一から組織を再構築したわけです。もし、サッカーが1964年の東京五輪以降ずっと繁栄を続けていれば、今のサッカーはなかったかもしれません。

しかし日本の野球界は、そういう経験をすることなく、ずっと繁栄してきました。その間に軟式野球、高校野球、六大学野球、社会人野球、プロ野球、それぞれの組織がそれぞれの理念を持ちながら歴史を築き上げてきたわけです。

サッカーの組織はピラミッド型です。きれいでわかりやすいですが、野球は複雑で統率が難しい。でもこれを根本から変えるには、サッカーのように失うものが何もないような状況を作らなければならないでしょう。その話をしたら、川淵さんも“そうだよな、確かに難しいよな”と頷いていました。

私は野球界は『ダイバーシティ』だと思うんです。いろいろなスタイルの野球が、それぞれ日本の発展のために貢献してきた。築き上げてきたものはそれなりに価値があるし、その美しさもある。それに手を加えることによってきれいな連峰が崩れてしまうこともあるかもしれません。私は各組織の人々と会って話を聞きながら、一緒に野球の未来を考えていきたいと思います。

BFJは、野球界の代表組織ですが、国際的な日本を代表する機関であって、国内ではそれぞれの組織の独立性、多様性を尊重しています。ただし普及振興は野球界全体で行うことですから、その部分はリーダーシップをとるべきだと思っています」

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