野球界が今になって「指導者資格」導入の危機感 山中正竹氏に聞く日本野球の未来像(上)

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BFJがU12ライセンスの導入を決意した背景には、言うまでもなく「野球離れ」という厳しい現実がある。

「今説明したように野球界はサッカーのような大きな負の経験をしないままに来てしまった。繁栄にあぐらをかいていたという部分はあったかもしれません。そんな中でも一部の人は、先が見えていて、未就学児に球遊びを教えようというような提言はしていましたが、繁栄していたころは注目されなかった。

でもようやく、最近は普及活動が本格化しています。2018年でいえば、普及振興活動は、プロからアマチュアまでを含めれば、4985件の活動をして、延べ260万人が参加しています。2019年も同じくらいの数字でした。例えば大分県の高野連が呼び掛けて、明豊高校などが子どもたちに野球を教え始めたし、DeNAなどプロ野球も積極的に活動しています。頭が下がりますが、アピールの仕方はうまいとは言えないですね。

サッカーやバスケットボール、武道などがどんな活動をしているのか学ぶとか、選手会がアピールするとか。地道な活動を組織として支えることが必要でしょう。野球界でも若い人が問題意識をもって取り組むようになりました。これをやり続けないと未来はないでしょう。そのときに大事なのは、選手を真ん中に置いて考えること。『プレイヤーファースト』と言いますが、私は『プレイヤーセンタード』が重要だと思いますね」

ライセンス導入の持つ意味

U-12指導者資格は、山中氏らのこうした問題意識が具体的に実を結んだものと言えそうだ。

「すでに野球界には、指導者が何万人もいます。資格と言うと“勉強しなくてはいけない”“落とされたらどうしよう”という不安の声があがります。“なぜ必要なのか”と思う人もいるでしょう。もちろん、今の時点では必須にはしていませんが、ライセンスを持っていないといけない時代が必ず来ます。だから今から学ぼう、準備をしようということなんです。

ライセンスを持っている指導者が、すばらしい指導をし始める。“あそこの指導は今までの野球とちょっと違うぞ”となれば、選手も母親も注目する。“あそこに行けば野球を楽しく教わることができる。こんなことが学べる”となれば、選手はそちらに集まるでしょう。

今、野球に対する拒否感、拒絶感は確かに存在します。そんな中で“受講しないと仕方ないな”という状況を作っていこうと思います。まずは入り口の12歳から、そしてU-15世代や高野連など他のクラスの組織もそういうものの必要性を認めていけるような世界観を作りたいですね」

広尾 晃 ライター

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ひろお こう / Kou Hiroo

1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイースト・プレス)、『もし、あの野球選手がこうなっていたら~データで読み解くプロ野球「たられば」ワールド~』(オークラ出版)など。

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