森喜朗会長の謝罪会見に不信感しか募らない訳 なぜ不用意な「女性蔑視」発言が生まれたのか

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「ありません」「ありません」と言い切ったことで“居直り会見”の印象を決定づけてしまいました。また、謝罪会見であるにもかかわらず、「一生懸命」「献身的に」「7年間」と自分の手柄をアピールしてしまったのは、周囲が助言をできないほど裸の王様になっていることを意味しています。もし自らの手柄をアピールしたいのなら、アシスト役を用意して他人の口から言ってもらうべきでした。続けざまに「老害」「粗大ごみ」という強烈なフレーズを用いたところに、「そんな言葉に屈する私ではない」「やれるものならやってみろ」という挑発を感じさせたのです。

その後、森会長は、「責任を取らないことで批判が強まるのでは?」と聞かれて、「ご心配いただいたのであれば、ありがとうございます。先ほど誤解を生んではいけないので『撤回します』と。オリンピック精神に反すると思ったから、そう申し上げました」

「今回の発言にみんな怒っていて『森さんの五輪を見たくない』という声も上がっていますが、どう受け止めていますか?」という質問に、「謙虚に受け止めています。だから『撤回する』と言っています」。

「女性の話は長いと思いますか?」と尋ねられると、「最近、女性の話を聞かないからわかりません。私も(話が)長い方なんです」。

「『五輪精神に反する』という話もありましたが、組織委員会の会長として適任と思いますか?」と聞かれて、「さあ……あなたはどう思いますか?」とはぐらかすように逆質問。記者が「私は適任ではないと思う」と返すと、「それじゃあ、そういうふうに承っておきます」。いずれも、まともに取り合わず、軽く返しただけのコメントに留め、「最初に謝罪と発言の撤回をしたから、それでいいだろう」「必要以上に謝らない」というニュアンスを感じさせました。

女性記者のマスクを外させる矛盾

森会長は記者があきらめずに質問を続けたとき、「面白おかしくしたいから聞いてるんだろ?」といら立ちをあらわにする姿を見せました。しかし、感情的になったことよりも、大きなミスを犯してしまっていたのです。

森会長は2人の女性記者に、「僕はマスクをされると言葉が聞き取れないので……」とマスクを外させた上で同じ質問を繰り返させました。この行為にネット上には、「耳も聞こえないのか」「83歳なんだから引退しろ」などの声が挙がっていますが、これは男女差別と同様に、年齢差別であり、安易にするべきではないでしょう。

次ページ約20分間で強引に打ち切ってしまってよかったのか
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