ESG投資のプロが語る「脱炭素マネー」の潮流 気候変動が生み出すリスクとビジネス機会

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――気候変動対策に積極的なバイデン政権に転換したことで、アメリカの投資家の姿勢はどう変わるでしょうか。

アメリカの投資家の中でもカルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)など一部の機関投資家はESGに関して非常に進歩的な考え方をしている。日本のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)と同様だ。一方で、ほかの多くの投資家ははるかに遅れており、ESGをまったく配慮しない投資家もいる。

バイデン大統領は気候変動対策と環境正義(Environmental Justice)を政策の柱としている。そのため、アメリカの投資家全体の間でESGへの関心が高まり、資金の流れに本格的な変化が起こるだろう。

アメリカの投資家は欧州やアジアの投資家に比べて投資のスタンダードや枠組みをより重視しており、アメリカのSASB(サステイナビリティ会計基準審議会)のルールをESG投資の際の参照基準としている。

ESG投資はリターンに結びつくのか

――ESG投資は必ずしも市場平均以上の投資リターンには結びつかないと言われてきました。

Sandra Carlisle●オックスフォード大学修士課程修了。1986年から金融業界に勤務。シティグループ、F&Cインベストメント、ニュートン・インベストメント・マネジメントでESGチームを主導。2017年にHSBCグローバル・アセット・マネジメントに入社。同社ロンドン拠点で機関投資家向けESG業務を担当。オックスフォード大学スミス校で環境に関する非常勤フェロー(写真は本人提供

ESGを組み込んだ投資や財務分析は必ずしも投資パフォーマンスにつながるとはいえない。ESGはパフォーマンスを生み出す1つの要素にすぎないからだ。しかし、中長期的なリスク調整後リターンで言えば、環境や従業員・株主への対応などのESGをうまく管理する企業は、中長期的によりよいパフォーマンスを上げるとわれわれは考えている。

――グリーンな経済活動を分類するEU(欧州連合)のタクソノミー規則が市場に導入された場合の影響をどう考えますか。

2021年3月に欧州のアセットマネジメント(資産運用)会社に対するディスクロージャー(情報開示)規則が施行される。欧州以外の誰もがその規則がどう機能し、何が開示されるかに注目している。

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