ESG投資のプロが語る「脱炭素マネー」の潮流 気候変動が生み出すリスクとビジネス機会

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一方、日本企業の課題と思われるのは、国際的な投資家として期待するレベルの対話を行うことが英米の企業に比べて依然難しいことだ。そのため、投資家として情報を得ることが比較的難しい。一部の日本企業の対応は極めていいが、閉鎖的な企業もまだ多い。文化的な行動様式の違いもあろうが、国際的に見れば変化はまだスローといえるかもしれない。

もちろん、過去10年間の変化は常にポジティブなものだった。投資家との対話や議論が増え、ESGに焦点を当てた取り組みが増えたのは確かだ。

――文化的な違いというのは言語を含めてですか。

言語は常に障壁になっている。これは日本に限ったことではない。言語の違いも含め、投資家との議論や対話を行う文化が英米企業に比べると進んでいるとはいえない。ただ、そうした文化は変化してきており、ESG重視によって大きな前進が見られる。

重要なのは脱炭素化の「証拠」

――石油・ガス業界など化石燃料関連の企業にはどう対応していますか。

われわれは気候変動リスクの観点からあらゆる産業の企業を分析する。投資先企業については、CO2排出原単位(carbon intensity)を見るために、ビジネスモデルのカーボン・フットプリント(商品・サービスのライフサイクル全体で排出された温室効果ガスをCO2排出量に換算して「見える化」する仕組み)を調べる。

もちろん化石燃料関連の企業はCO2排出原単位が高いので、より厳密に分析する。そうした企業に対して脱炭素化のプランを尋ねる。ネットゼロ達成に向けて、期間はどれくらいを想定しているのか。目標達成に向けてどのような課題があり、どのような技術を用いるのか。

さらに、非常に実務的な質問として、経営陣の報酬を脱炭素化の取り組みに連動させているかといったことも聞く。そうした分析を通じて脱炭素へ向けた勝者と敗者を判断し、ポートフォリオの低カーボン化を進めている。重要なのは、脱炭素化へのトランジション(移行)を確信できる証拠があるかどうかだ。

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