元リクルート37歳の作家が「地面師」を描いた訳

「地面師たち」の新庄耕は著作に何を込めたか

『地面師たち』の作者、新庄耕氏。実際に起こりうる経済事件を題材にした小説はどのように描かれたのか(撮影:今井 康一)
地主になりすまして、他人の土地を勝手に売買する「地面師」。2017年6月、大手ハウスメーカーの積水ハウスが分譲マンション用地をめぐり、約55億円をだまし取られたことから一躍注目を浴びた。一連の事件を下敷きに、地面師とハウスメーカー、そして警察の暗闘を通じて伝えたかったメッセージとは。『地面師たち』を書いた作家の新庄耕氏に聞いた。

被害額は3桁億円がいい

――舞台は東京・港区の泉岳寺駅前に広がる駐車場。金額にして100億円。実際の事件とは所々ディテールが異なります。

実際の土地は五反田の廃旅館で、被害額は55億円。それと同じじゃ物語としては弱い、という話になった。やっぱり3桁億円じゃないと。といっても、地価の高い東京でさえ3桁億円もする土地は意外に見つからない。港区、千代田区、中央区……地図を広げて探していたら、ちょうどJR山手線の高輪ゲートウェイ駅前に広い駐車場を見つけた。不動産業界の方々からも「あそこならいいんじゃない」というお墨付きももらって、ここを物語の舞台にしようと。周辺にはお寺が多いから、住職が土地を持っている設定にしました。

不動産はモノがあるじゃないですか。それが絵的にすごく面白い。大金が動く様子を映像として描くことができる。これが金融だったら、画面の中で数字が移動するだけになってしまう。

――本物の地面師には会えましたか。

たまたまツイッターで出会った不動産関係者の1人は事件の主犯格だった地面師と会ったことがあって、指が欠けていたといったリアルな話が聞けました。意外だったのが、普段の地面師はまともな仕事をしていること。おいしい話があったときだけ、地面師として暗躍する。

僕自身は、直接地面師に会ったことはありません。取材は裁判資料を見たり、地面師事件を担当している弁護士に話を聞いたりするのが中心。参加費2万円の地面師対策セミナーなるものにも参加して、地面師の歴史や構成員の人物関係図、契約時の書類の見方などが書かれた冊子ももらいました。

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