洗練され、きらびやかな街の代表格でもある南青山でタクシーを拾うと、若い青年ドライバーに当たった。
2019年の秋に大手旅行代理店から転職したという松永さん(24)。新卒採用で待望の第一志望の旅行代理店に就職したが、人間関係のもつれから約1年で退職に至った。タクシー業界を選んだのは、語学力を活かして訪日外国人にドライバー目線で日本の魅力を伝えたいと思ったからだという。
ただ、コロナの影響で外国人客も大きく減り、今は1カ月に1人乗せればいいほうだと嘆く。
1月の売り上げは悲惨な状況
「転職時はいろいろ説明会にも顔を出し、この3年くらいタクシーが好調で、頑張れば稼げる業界だという理解のもとで飛び込みました。当時は人間関係に疲れ切っていたので、自分の裁量で仕事ができる環境を探していたんだと思います。3カ月の研修を経て、12月から現場に入ると初月度は会社員時代の2倍になった。
ところが、コロナで2020年の1月ごろから徐々に落ちてきて、12月、今年の1月は悲惨な状況です。普段は渋谷、恵比寿あたりを中心にやっていますが顧客待ちのタクシーがあふれ返っており、ここまでくると何をしても一緒と、あきらめに近い感覚です。『せめて東京五輪までは』と思っていますが、いいときを知らない僕からすれば、その意思を保ち続けることができるか……」
一般的にタクシー業界では、1台当たり3万円の売り上げが損得の分岐点だといわれる。だが、今はどんなドライバーであれ3万円以上を稼ぐのは困難な状況だ。それでも公共交通機関として一定台数の稼働率を保持する必要があり、休業という判断を下すことは難しい。ドライバーは言わずもがな、タクシー会社側もここまで苦しいと休業をしたいというのが本音だろう。実際に個人タクシーなどは休業者の数も多い。
明らかに供給過多となっていたタクシーの数も1月17日から、ようやく通常の35%減を目安とした台数制限が一斉にかかり始めたという。少しずつ乗務員過多の流れは緩和されつつある、とドライバーたちはいう。それでも、一向に出口が見えぬ長いトンネルはまだまだ続きそうだ。
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