目的と手段が混ざる人に教えたい「思考のコツ」 儲からない同質化競争を避けるために役立つ

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もう1つ、戦略的に物事を考える際の基本的な思考法をご紹介します。「論点」を設定し、「仮説」を立て、「検証」する、という手法です。

①論点:「何を知りたいか」を決定
「論点」は疑問文の形をとります。ですから正しい論点設定をすることが重要で、そのためには、先の「目的と手段を混同しない」ところでご紹介した思考法を使って「正しい目的を設定する」必要があります。この最初の論点を間違えると、そのあとの作業が無駄になるため、注意しましょう。
②仮説:調べる前に仮の答えを考える
論点は疑問文ですから答えが必要で、調べる前から最善の推測で出す仮の答えが「仮説」になります。ここで重要なのは、「調べてから考える」のではなく「調べる前に考える」思考法です。現実のビジネスではいくら時間をかけても必要な情報が100%収集できることはありません。そのため、日頃から「不完全な情報をもとに、仮でもいいから最善の推測で意思決定する」訓練をすることが大切なのです。
③検証:仮説が正しいかを知るために必要最小限のことを調べる
現実世界では時間も資源も有限で、すべてシラミつぶしに調べることはできません。ですから、仮説が正しいかどうかの判断に必要なことだけに限定して「検証」を行います。その結果、仮説が正しければそれ以上調べる必要はなく、すぐに行動に移ればよいでしょう。仮説が間違っている場合のみ、次の仮説を構築して検証を行います。

同質化競争を避けるための「インサイト」思考

ここまで解説した論理的思考は、重要な思考方法です。ただ、限界もあり、競合が同じ情報にもとづいて論理的に考えると、競合も似たような戦略をとる可能性が高いです。競合が類似の戦略をとれば、結局は差別化なき同質化競争に陥り、誰も儲からなくなります。

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現代の社会経済環境は「不連続な大変化」と「破壊的変化」が起こり、競争が激化しています。不確実性が高く変化のスピードが速い場合、論理的思考では情報不足で結論が出ず、思考停止に陥って戦略立案が滞る危険性があります。

そのため、論理的思考と「インサイト」を組み合わせることが必要です。インサイトは「直感」「ひらめき」「洞察力」を意味します。

先に解説した「論点」や「仮説」は、まずはインサイトで設定するもので、いったん論点や仮説を設定すれば、そのあとはロジックで分解・検証できます。また、競合他社と差別化するためのヒントも論理的な積み上げでは出てきませんから、まずはインサイトで思考のヒント・視点を見いだして、そのあとにロジックでその視点の妥当性を検証するのです。

インサイトの養い方を簡単にご紹介すると、以下の3つがポイントです。

①常に前提を疑う
②二極性を意識し、自分がどちらに振れているかを考え、それとは逆のことを考える
例えば「コストダウン」と「価格アップ」という二極性の場合、利益向上のために自分がコストダウンに振れているのであれば、価格を上げられないかと考えてみます
③「気持ち悪い」「なぜかイイ感じがする」という感覚を大切にする

経営戦略という観点からビジネスで有効な思考法を紹介しましたが、この論理的思考法はさまざまなシーンで活用できます。ぜひ試してください。

菅野 寛 早稲田大学ビジネススクール教授

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かんの ひろし / Hiroshi Kanno

早稲田大学大学院経営管理研究科(早稲田大学ビジネススクール)教授。東京工業大学工学部卒。同大学院修士課程修了。米国カーネギーメロン大学にて経営工学修士取得。その後、ボストン コンサルティング グループ(BCG)にて十数年間、日本およびグローバル企業に対してさまざまなコンサルティング・サービスを提供。BCGテクノロジー、メディアおよびテレコミュニケーション専門部会のアジア/パシフィック地区リーダーを経て、2008年より一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授。2016年より現職。

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