「発達障害の従業員」について会社が負う"義務" 裁判例から読み解く「合理的配慮義務」の内容

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事業主は発達障害の従業員について、特性に応じた配慮をする義務を負っています(写真:xiangtao/PIXTA)
NHKや各種メディアで特集が組まれるなど、「発達障害」の言葉の認知度は高まっているが、他人事として捉えている人もいるのではないだろうか。
2012年の文部科学省の調査によると、全国の公立小中学校の通常学級に通っていて発達障害の可能性があるとされた子どもの割合は、約6.5%。これを成人にあてはめると、20人同僚がいたら平均1.3人、30人同僚がいたら平均1.95人と、けっこう身近な印象だ。職場に発達障害やその疑いがある人、自分は発達障害かもしれないと思っている人、どちらも気持ちよく仕事ができるよう、発達障害を取り巻く労働問題、会社や周囲に求められる対応の基礎を知っておこう。

会社に求められる「発達障害の従業員」への対応

発達障害とは、法律上、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」(発達障害者支援法2条1項)とされている。

法律上の定義だけではイメージがつかみにくいが、ざっくりとした特徴としては(全員に当てはまるわけではない)、「コミュニケーションが苦手」「空気を読むのが苦手(言外の雰囲気から察するのが苦手)」という人が多い。そして、こだわりを強く持つという特徴もあることが多く、自分の興味分野や得意分野で大きな成果を上げることもある。

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そして、障害者の雇用の促進等に関する法律36条の3に基づき、事業主は、発達障害の従業員(発達障害により、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受けまたは職業生活を営むことが著しく困難な人をいう)について、特性に応じた配慮をする義務を負っている(以下、「合理的配慮義務」と呼ぶ)。

この事業主の義務は、障害者雇用枠で雇用された発達障害の従業員についての義務にとどまらず、一般雇用枠で雇用された発達障害の従業員についての義務でもあるのがポイントだ。

また、「採用当時、発達障害だとわからなかった」という場合でも、雇用後にその事実が判明した場合には、事業主は合理的配慮義務を負うことになる。

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