16年ぶりの改定で「養育費」はどう変わったのか 不払いの「養育費の回収」もしやすくなった

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不払いの養育費が法律改正で回収しやすくなりました(写真:tsukat/PIXTA)
「なんとなくわかっているつもりだけど、具体的には知らないこと」、今回は子どもがいる人はもちろん、将来子どもを持つことを考えている人も知っておくべき養育費。
養育費が問題になるときは、別居に伴う引っ越し、子どもの転校、自分の仕事の調整などいろいろな問題が怒涛のように押し寄せてくるので、そこで一から養育費のことを調べるのは大変。「離婚したときに支払う、請求することになるお金」という漠然としたイメージだけでなく、もう一歩進めて養育費のことを知っておこう。

養育費は「父親が払うもの」とは限らない

離婚する夫婦の間に未成年の子どもがいる場合、その子どもの親権者を、夫か妻のどちらかに決める必要がある。親権者とは、①身上監護権(子どもを監督・保護する権利)と②財産管理権(子どもの財産を管理する権利、子どもの法律行為に対する同意権)を持つ親のこと。この①と②の権利は、原則は1人の親が持つことになるが、例外的に、①と②の権利を持つ親を別々にすることもできる。

そして、養育費とは、「子どもを監護していない親(非監護親)が、子どもを監護する親(監護親)に対して支払う、子どもの養育に要する費用」のこと(基本的には成年に達するまでの支払いだが、大学進学が想定されるようなケースでは、22歳までの支払いとなることがほとんど)。

養育費は、父親が支払うものと決まっているわけではなく、父親が子どもを監護する場合には、母親が父親に対して養育費を支払う立場になる。

父親と母親の話し合いで2人が納得して合意した金額であれば、その額が養育費となり、ここに明確な基準というものはない。

しかし、父親と母親の話し合いで養育費が決まらない場合は、「調停、審判、訴訟」といった、裁判所での手続きに進むことになる。そして、裁判所での手続きで養育費を決める場合には、原則として、裁判所作成の「養育費算定表」を基準に決めることになる(養育費算定表をそのまま当てはめるのが実情にそぐわないような個別事情がある場合は、例外的に、個別事情に即した判断がされることもある)。

この裁判所作成の「養育費算定表」は、子どもの人数や年齢といった条件に応じて複数のパターンがある。表の縦軸は「養育費を払う側の年収(額面)」、表の横軸は「養育費を受け取る側の年収(額面)」となっており、縦軸と横軸のそれぞれ該当する金額が交わる部分の金額が、養育費の基準となる。

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例えば、14歳以下の子どもが2人いて、母親が子ども2人を監護するという場合で、母親の給与年収300万円、父親の給与年収550万円というケースでは、養育費は「月額6万~8万円」が基準となる。

この養育費算定表は、16年ぶりに、社会情勢等の変化を踏まえて2019年12月23日に改定されたばかり。改定後の算定表は、改定前の算定表よりも、養育費の額が増加するケースが多くなる。

父親と母親の話し合いで養育費の交渉をする場合、相手の主張する養育費金額が妥当なのか、迷うこともあるだろう。そんな場合は、養育費算定表に自分のケースを当てはめてみて、交渉・検討の材料としてみてほしい。

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