手を差し伸べる世の中をつくっていくべき
中村淳彦(以下、中村):現在、女性の貧困は単身女性の3人に1人、1人親だと半数以上が貧困という状態です。貧困は本当に一般化してしまって、苦しんでいる人はどこにもいます。でも、汚い服装をしているわけでないし、見た目にはわからない。なので、「日本に貧困なんてないでしょう」なんて人もたくさん。そんな中、室井さんは「貧困問題をなんとかしよう!」と訴えてくれています。
室井佑月(以下、室井):私が嫌なのは貧困で大変な人を見て、まだ自分は大丈夫だからみたいな意識。そういう意識の保ち方。
中村:現在の貧困は奨学金とか労働者派遣法とか、介護保険とか、国の制度や法改正が原因のケースが多い。ワーキングプアだらけ。必然的に女性が主なターゲットになっています。
でも、どこかのタイミングで中年男性にシフトすると思っていて、中流以下の人々には男女問わず漠然とした不安がある。なので、自分より下の層を眺めて、ちょっとホッとして見て見ぬふりは、貧困記事のいちばんポピュラーな読まれ方だと思っています。
室井:でもね、そうじゃない人も絶対にいる。私がそうだもん。中村さんや鈴木(大介)さんの記事や本を読んで、自分の周りを広く眺めて現実を知った。「自分は大丈夫だから」みたいな感覚はなかった。
逆に何かできることないかって思ったよ。だって、明日は自分かもしれないわけでしょ? すごく大切にしている息子とか、息子の友達とか、誰かが困ったとき、手を差し伸べる世の中をつくっていかないとって思ったよ。
中村:多くは月3万~8万円くらい家賃分程度のお金が足りていないように感じます。とくにシングルマザーには雇用がないし、ワーキングプアだし、ずっと抜け出しようのない不安を抱えている。一部、団地とかでは助け合いがあるけど、ほとんどは1人で悩んでいて、本当によく生きているなってくらい苦しそうにみえる。