中村:いまは上流と下流の分断があって、たぶん2025年問題で団塊世代が後期高齢者になると、世代の分断が本格化する。それで男女まで対立しちゃうと、本当に社会が成り立たなくなっちゃう。でも、室井さんは昔から女性にすごく人気がある、というのは聞きます。講演すると女性ばかりとか。
室井:変な宗教ってくらい、おばさんから若い子まで女性ばかり。だから彼女たちに伝えているのは、対立しちゃダメってこと。例えば褒めていっぱい働かせるのもよし、そそのかして家事を分担するのもいい。笑顔でね。こっちが変われば相手も変わるから。
中村:このまま、どんどん貧困が増えるのはキツイです。いずれ自分もそうなるだろうし。四六時中、キツイなと思っているのでテレビに出るような著名な人にたまたま会ったりしたときに、貧困問題に対する見解を軽い感じで聞いているんです。
何人かですけど、みんな「自己責任」「正社員が恵まれすぎているだけ」みたいな返答。これはもう政治で解決みたいなことはないだろうなって思っているところです。
室井:でも、弱者救済は政治の仕事よ。先が見えない貧困って、死ぬよりつらい。死なないから生きてるって死ぬよりつらい。私、たまたま貧困にならなかったけど、離婚したばかりのとき、すっごい忙しい時期があった。子どものために誰からも「出てけ」って言われない自分の家を早く買おうと思ったの。だから仕事、全部断らないでやってたら、月60本連載になっちゃったことがあるのよ。
中村:えー、それは無理でしょう。その半分でも寝る時間がない、みたいな量ですよ。本当に死んじゃいますよ。
室井:その中に小説30枚もあったから、週2日は完全な徹夜。テレビの仕事も今までどおりにやって、週末は講演会だった。もうすさまじかった。そしたらね、髪は抜けていくし、ほんとにつらかった。
そのボロボロだった頃、友達から「あんたフラフラしてるから子ども見てあげるよ」って言ってくれた。余裕がないからこっちから「助けて」も言えないあたしだったのに。
「助けて」とまずは声を上げること
中村:追いつめられて冷静じゃないわけですね。少しの余裕をもって「助けて」と言えば、子どもを短時間預けるとか、子どもにご飯を食べさせるとか、そのくらいは誰かしてくれるかもしれない。でも、余裕がなくて冷静じゃないからわからないわけですね。
室井:それくらいだったら自分に言ってくれてよかった、って思う人は案外いると思うの。だから「助けて」って言ったとき、例えば殴る旦那だったらどういうふうにすればいいか、シェルターに入ってとか、どういうふうに今後すべきとか。声を上げたら、たぶん情報も入ってくる。相手も頼られてうれしい気持ちになるかもしれないし、声を上げてみるべきよ。
中村:『東京貧困女子。』に出てきた女性で、やっぱり声を上げたくてもどこにも言えないって人はたくさんいました。実際に話して記事にしたことで、支援とか援助の声がかかったことは何度もあった。
室井:あの連載を読んで思ったことは、そこまでなる前に声を上げるべきってこと。変な親がいて自分の稼ぎを吸い尽くされて、自分まで大変なことになってもまだ親が、っていう人とか出てくるでしょう。
大学生だったら教授とかに言ってみるべき、どうすればいいかって。そう思った。相手がうれしいとまでいかなくても、何かしらできることはある。だから苦しい人は「助けて」って、まず声を上げること。
中村:そのまま我慢していると自分もおかしくなるし、人が離れていってしまう。悪くなるばかり。もっと早く声を出そうって、本当にそうですね。今日は、どうもありがとうございました。
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