日本の貧困問題、本当に「自分はまだ大丈夫」か 室井佑月氏「苦しい人は助けてって声上げて」

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室井:超少子高齢化ってやっぱりこの国の1番の難問でしょ。女性活躍っていってるけど、大問題である少子高齢化をクリアするんだったら、困っている人、例えばシングルマザーなどにもっと優しくなきゃいけないよ。自己責任論を押しつけて、切り捨てているのに、もっと子どもを産めっておかしいよね。

中村淳彦(なかむら あつひこ)/貧困や介護、AV女優や風俗など、社会問題をフィールドワークに取材・執筆を続けるノンフィクションライター。最新刊は『東京貧困女子。』(編集部撮影)

中村:「暴力を振るう男を選んだ自分が悪い」とか「養育費を払わない男と結婚したのが悪い」とか。夫が暴力を振るうかはなかなかわからないし、離婚しても現在養育費を受けているのは19パーセント(厚生労働省調べ)しかいない。これは少なすぎますよ。

室井:冷たすぎるよね。自己責任とたたく人って、誰のためにどうしてそんな精を出してぶったたくのかと思うし。どう考えても、男が暴力を振るったり、養育費を払わないことをたたくべきだよね。

中村:男女平等とか女性の社会進出とか、最近急激に進んでいるけど、やっぱりまだまだ男が優位な社会であるってことでしょうね。男女平等に反対って層でしょう。

でも今、人手が足りていない医療福祉とかサービス業の仕事は、女性のほうが圧倒的に向いているし、最終的には因果応報として返ってきて、中高年男性が虐げられて、排除されるオチになりそう。中高年男性のことは誰も助けないだろうし、正直こわいです。

室井:女が虐げられてきた歴史もあるし、今もそうだって思っている。男女の年収差みたいなのを見れば、明らか。けど、男の子の母親にはぜひ言いたいんだよね。「息子をそう育てんなよ」って。男がいくら威張ろうが女が命がけで産んでるんだよって思う。

個人で助けるには限界がある

中村:シングルマザーは、本当に大変。このまま自己責任で放置するのは、本当によくない。だいたいが非正規の最低賃金に近い時給で働いて月7万~12万円くらい稼いで、仕事と家事と子育てでまったく時間がなくなって、さらに子どもが寝たらお金のことで悩んで眠れないみたいな。

室井:シングルマザーの半分が貧困って話は、もう何度もいろんな媒体で書いた。けど、ほんと無力感。響かない。読者から「フェイク書くな」とかって投書がいっぱい来たりして伝わらない。

中村:母子世帯は123万世帯、平均収入は243万円(厚生労働省調べ)となっています。収入なので児童扶養手当、児童手当、養育費が含まれての数字。本当に厳しい。一般的な家賃がかかったら暮らせないですね。

室井:なかなか伝わらないけど、ちょっと自分の周りをきちんと見てみようとか、もっと現実を知りたいって人だって少なくともいるよ。きっと増えている。私は身近な困っている人にお金を貸したり、直接助けたりはできる限りしてきた。けど、個人でそうするには限界がある。やっぱり疲れてきちゃうし、無理がある。

中村:15年くらい前までは女性の貧困は夜の世界とか、男性だったら裏社会とかに集まっていた。けど、いまはあまりに増えすぎた。本当に誰でも、どこにもすぐ隣に貧困がある。いつもと変わらない日常風景の中にあるから、わからない。

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