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「発達障害の従業員」について会社が負う"義務" 裁判例から読み解く「合理的配慮義務」の内容

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  • 宮川 舞 銀座数寄屋通り法律事務所 弁護士
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「発達障害の従業員についての合理的配慮義務」という言葉は、どのような義務を意味するのか、抽象的なので具体的なイメージが湧きにくい。

裁判例から見る「合理的配慮義務」

そこで、比較的最近の、発達障害について詳細に検討している裁判例を紹介したい。2016年3月29日の京都地方裁判所の判決だが、事案の概要は、(1)Xさんは、2008年3月にアスペルガー症候群との診断を受けた後、Y法人(公立大学法人)と正規雇用契約を結び、採用後に、Y法人に自分がアスペルガー症候群であると伝えた。

(2)XさんはY法人で准教授として勤務していたが、Y法人は、Xさんを、①生協職員とトラブルになったときに抗議のうえ生協職員を土下座させたり、②規則違反をしたY法人の学生と口論になり110番通報をし、その後その学生から謝罪がなされなかったことなどからその学生を告訴したり、③大学病院で受診中に情緒不安定になり果物ナイフでリストカットをし、銃刀法違反の嫌疑により現行犯逮捕されたりしたことなどを理由に解雇した、というものである。

京都地方裁判所は、結論として、「Y法人のXさんの解雇は、客観的に合理的な理由を欠くものであって、無効である」とした。この判決の詳細までは紹介できないが、「合理的配慮義務」との関係から見たこの判決のポイントは、以下の①、②の判断内容だ。

① Xさんのアスペルガー症候群の特徴(ルールを厳格に守ることを極めて高い水準で他者にも要求するところがあり、これが守られない場合には自己に対する攻撃であると被害的に受け止め、その感情をコントロールできず、反撃的な言動をとる)からすると、仮に本人の行為や態度が客観的には当然に問題のあるものであったとしても、本人としては、的確な指導を受けないかぎり問題意識が容易に理解できない可能性が高かった。

② Xさんの非難可能性や改善可能性を検討するにあたっては、本人が問題意識を認識しうる機会(指導、指摘)が与えられていたかという点も十分に斟酌しなければならない(判決では、Y法人がXさんに対して問題行動を認識させ改善する機会を与えていなかった、と判断した)。

次ページが続きます:
【「発達障害の人に伝わる形」での指導】

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