ベンチャーエコシステムの成功例として揺るぎない地位を占める米シリコンバレーには、米国中、世界中から起業家が集まり、その中からアップル、グーグル、フェイスブックのような成長企業が生まれています。
このシリコンバレーが発展する基盤にも、実は政府の支援がありました。米国のベンチャー支援は1958年のSmall Business Investment Company制度の創設に端を発します。この制度により、以後50年間、ベンチャーキャピタル産業を育成してきたことが、今日の米国ベンチャーを支えるリスク資金供給の基礎となっているのです。その後も1979年のERISA法の改正(年金基金改革)とキャピタルゲイン減税、1982年のSmall Business Innovation Research制度、1985年のヤングレポートを受けた一連の競争力強化策と、骨太の政策を継続して実施してきたことが、今日のエコシステムを形成したのです。
ベンチャー支援策で留意すべき5つのポイント
一方、留意すべきは、そのような米国の政策を模倣しつつ失敗する事例も数多くあるということ。ベンチャー政策の研究の大家であるハーバード大学ジョッシュ・ラーナー教授の著書に“Boulevard of Broken Dreams”という本があります。『壊れた夢たちの大通り』という題名のとおり、世界中のベンチャー政策の失敗例を列挙、分析。各国の政策がシリコンバレー創出を夢見つつ失敗する理由として、①素材がないところに無理に作ろうとする、②民間のプロの力を活用できていない、③制度を検討しすぎて複雑にする、④政策の規模が市場に対して小さすぎるか大きすぎる、⑤政策の効果が出るまで時間がかかることを理解できず途中でやめてしまう――という点が指摘されています。
本稿で述べたベンチャー有識者会議の議論なども含めて、日本のベンチャーの課題は明確であり、やるべきことは決まっているといえるでしょう。また、最近は「新しいことに挑戦しよう」という機運も盛り上がり、志の高い起業家が増えてきたように感じます。ラーナー教授の指摘を反面教師としつつ、「民間のプロの力を活かす」「複雑にしない」「適切な規模で実施する」、「効果が出るまで継続する」という姿勢で政策にあたる必要があります。ブームや景気変動に左右されない揺るぎないベンチャー政策を進めるべきであり、その一助になりたいと考えています。
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