なぜ国がスタートアップを支援するのか 新連載 国の役割は「エコシステムを支えること」

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
「新事業創出のための目利き・支援人材育成等事業 」のひとつである新事業創出ワーキンググループの会合での筆者

ベンチャーエコシステムの成功例として揺るぎない地位を占める米シリコンバレーには、米国中、世界中から起業家が集まり、その中からアップル、グーグル、フェイスブックのような成長企業が生まれています。

このシリコンバレーが発展する基盤にも、実は政府の支援がありました。米国のベンチャー支援は1958年のSmall Business Investment Company制度の創設に端を発します。この制度により、以後50年間、ベンチャーキャピタル産業を育成してきたことが、今日の米国ベンチャーを支えるリスク資金供給の基礎となっているのです。その後も1979年のERISA法の改正(年金基金改革)とキャピタルゲイン減税、1982年のSmall Business Innovation Research制度、1985年のヤングレポートを受けた一連の競争力強化策と、骨太の政策を継続して実施してきたことが、今日のエコシステムを形成したのです。

ベンチャー支援策で留意すべき5つのポイント

一方、留意すべきは、そのような米国の政策を模倣しつつ失敗する事例も数多くあるということ。ベンチャー政策の研究の大家であるハーバード大学ジョッシュ・ラーナー教授の著書に“Boulevard of Broken Dreams”という本があります。『壊れた夢たちの大通り』という題名のとおり、世界中のベンチャー政策の失敗例を列挙、分析。各国の政策がシリコンバレー創出を夢見つつ失敗する理由として、①素材がないところに無理に作ろうとする、②民間のプロの力を活用できていない、③制度を検討しすぎて複雑にする、④政策の規模が市場に対して小さすぎるか大きすぎる、⑤政策の効果が出るまで時間がかかることを理解できず途中でやめてしまう――という点が指摘されています。

本稿で述べたベンチャー有識者会議の議論なども含めて、日本のベンチャーの課題は明確であり、やるべきことは決まっているといえるでしょう。また、最近は「新しいことに挑戦しよう」という機運も盛り上がり、志の高い起業家が増えてきたように感じます。ラーナー教授の指摘を反面教師としつつ、「民間のプロの力を活かす」「複雑にしない」「適切な規模で実施する」、「効果が出るまで継続する」という姿勢で政策にあたる必要があります。ブームや景気変動に左右されない揺るぎないベンチャー政策を進めるべきであり、その一助になりたいと考えています。

次回以降、政府のベンチャー支援策について、具体例を交えながら説明していきます(第2回は、7月8日掲載予定です)。
石井 芳明 経済産業省 新規事業調整官

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

いしい よしあき / Yoshiaki Ishii

経済産業省 経済産業政策局 新規産業室 新規事業調整官。1965年生まれ。1987年、岡山大学法学部法学科卒業。1996年、カリフォルニア大学バークレー校 留学(公共政策 単位履修生)。2000年、青山学院大学大学院国際政治経済学研究科卒業(国際経営学修士)。2012年、早稲田大学大学院商学研究科卒業(商学博士)。1987年、通商産業省(現・経済産業省)入省。中小企業・ベンチャー企業政策、産業技術政策、地域振興政策等に従事。1997年、同省工業技術院国際研究協力課、2000年、中小企業庁経営支援課、2003年、経済産業政策局産業組織課、2006年、中小企業基盤整備機構資金支援課、2007年、同ファンド企画課、2008年、大田区産業経済部産業振興課課長、2011年、地域経済産業グループ地域経済産業政策課を経て、2012年から現職。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事