ANAとJALの財務が「当面の間」深刻ではない理由 航空大手2社の決算書分析から見えてくる戦略
当面は、こういった戦略を続けることでコロナ禍を耐え忍ぶと思います。ほかにも新規事業で収益を得るという戦略もありますが、航空会社は非常に難しいのではないでしょうか。すでにANAは2007年4月、直系13ホテルと運営企業を総額約2800億円で売却し、それを原資にB787などの新機材を購入し、航空事業に集中しようとしました 。当時は航空機需要が伸びていましたから正しい選択だったかもしれませんが、現状はこれが裏目に出ていると言わざるをえません。
国有化を訴える声もありますが、国有化の可能性は低いと考えます。2010年1月にJALが破綻し、事実上国有化されたとき、同社は不採算事業の大幅な削減には成功したものの、その後5年間は新しい事業を立ち上げたり拡大したりする戦略がまったくとれませんでした。まさに“喪に服した”わけです。
その間、ANAはJALを大きく引き離し、業績を伸ばしました。政府専用機も運用するようになりましたし、スカイマークを買収して事業の拡大にも成功したのです。
ANAもJALも当時の経験が身に染みていますから、国有化は極力避けたいと考えているでしょう。財務内容を見ても、今のところ国有化にまで至ることはないと思います。
観光需要は必ず復活する
私は、中長期的には、航空業界は必ず復活すると考えています。もちろん、コロナ禍がいつまで続くかは誰にもわかりません。スペイン風邪のときのように3年かかるという予測のほか、インバウンドが完全に戻ることを考えると5年はかかるという見方もあります。コロナの影響がある間は、業績復活にはもちろん制約がかかります。
仮にコロナ禍が終わったとしても、リモートワークの普及などテクノロジーの進化によって、ビジネス面での航空機需要は戻らないという声もあります。確かにそうでしょう。
しかし、観光需要は別です。旅行したいという欲求は人間の本能ですから、需要が減少したままであることは考えられません。現在、中国では国内で爆買いが発生しています。渡航制限によって海外に移動できないため、国内を旅行して消費しているのです。コロナ終息後は、これと同じことが世界中で起こるでしょう。
きたるその日に向けて、航空産業を含めた観光インフラを維持することが大切なのです。そこまでANA、JALにはぜひ耐えてもらいたいものです。
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