私が9割の中間管理職はいらないと断言する訳 不要な仕事をわざわざ作ってしまっていないか

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私が東レ時代にいちばん売上高の大きい繊維事業は大赤字になったことがありました。この繊維部門の再建を、のちに社長になる役員と一緒に手がけました。私はまだ課長になって1年半しか経っていませんでした。

生産部門も営業部門もスタッフを3割削減しようということになりました。その一環として描く事業を管理する4つの課をひとつに統合して、事業管理室として効率を上げようということになったのです。そこで白羽の矢が立ったのが私でした。

その組織改正の前、私は自分の課では、徹底的に生産効率を上げることで残業を減らしていました。月に60数時間もあった残業時間をほぼゼロにしようと考えたのです。

2カ月もすると残業時間は半分に減っていました。その後、どんどん改革を進めて、気づけば残業は一桁になっていました。私はそのとき長繊維二課の課長でした。隣には当然、長繊維一課という課があります。そこは、月に80時間も残業をやっていました。しかし、うちの課はほぼゼロになってしまった。

わざわざ残業しなければならなかった

ではなぜ、長繊維一課はそこまで残業をしなければならないのかというと、ある意味、デヴィッド・グレーバーが言ったような「ブルシット・ジョブ」に近いわけです。

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つまり、彼らはわざわざ自分たちで残業をしなければならないほど、不要な仕事を作ってしまっていたのです。その不要な仕事を作っていたのは、その課の課長でした。部下たちに「あれをやれ、これをやれ」と必要かどうかもわからない仕事を振って、そのぶん、残業が増えていった。もっと単純に言えば、残業をしていれば仕事をやった気になるのです。でもよくよく考えてみると、生産効率は上がっていない。それは本来やらなくていい仕事だったからです。

逆に私は、必要にない仕事はどんどん削っていった。

4つの課を統合したものですから、仕事だって4つぶんある。

しかし、室長である私はひとりしかいない。

そもそも会議に出る時間もありません。ですから、そういう会議はやめるか、やるとしても私の代わりに課長代理の人に代行してもらいました。それで問題があったかというと、特にありませんでした。

それまでいかに不必要な会議をやっていたか、ということです。

佐々木 常夫 佐々木常夫マネージメント・リサーチ代表取締役

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ささき つねお

1969年、東京大学経済学部卒業、同年東レ入社。自閉症の長男を含め3人の子どもを持つ。しばしば問題を起こす長男の世話、加えて肝臓病とうつ病を患った妻を抱え多難な家庭生活。一方、会社では大阪・東京と6度の転勤、破綻会社の再建やさまざまな事業改革など多忙を極め、そうした仕事にも全力で取り組む。

2001年、東レ同期トップで取締役となり、03年より東レ経営研究所社長となる。 10年、(株)佐々木常夫マネージメント・リサーチ代表。

何度かの事業改革の実行や3代の社長に仕えた経験から独特の経営観をもち、現在、経営者育成のプログラムの講師などを務める。

著書に『完全版 ビッグツリー』『そうか、君は課長になったのか。』『働く君に贈る25の言葉』(以上、WAVE出版)など多数。

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