出張1回で「隔離1カ月半」日中ビジネスの危機 世界初のロックダウンから1年経った中国の今

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一方、この1年で12回の隔離を経験し、「1年の半分はホテル隔離。隔離日本記録かもしれない」と自嘲する松井さんは、コロナ禍が招いた食品業界の変化をプラスに見ている。

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「日本の食品産業はレガシー産業で、対面の面談が当たり前だった。国土が広い中国は商談で飛び回ることが難しく、以前からメッセージアプリでビジネスが可能だったが、日本は『試食あるべし』で、信頼関係ができても呼べば来るのが当たり前、オンライン商談などもってのほかという空気だった」

今後も1年はこの状況が続くと想定

緊急事態宣言でテレワークが広がり、しぶしぶではあるが、日本でも「オンライン商談やむなし」という雰囲気が出てきた。「日本にいる期間が限られ、足で稼ぐ営業が難しかった私にはやりやすくなった」と松井さん。最初にホテル隔離を経験した昨年3月と比べても、商談やイベント参加などオンラインでできる仕事が格段に増えた。

オンライン会議の様子(写真:三宅さん提供)

空気が読みにくくなったと嘆く三宅さんも、昨年2月に全従業員が在宅勤務になった際に、各社員の素の能力が見えた点を「発見だった」と振り返る。

「全員がリモートという平等な土俵に立つと、人の助けがあって高いパフォーマンスを出せていた社員や管理されなくても業務を進められる社員など、個のスキルがよりはっきり見えるようになった」

三宅さんは今後1年もこの状況が続くと想定し、新しい営業や人材評価のあり方を2021年の事業計画に落とし込んでいくという。

浦上 早苗 経済ジャーナリスト

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うらがみ さなえ / Sanae Uragami

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育など。中国メディアとの関わりが多いので、複数媒体で経済ニュースを翻訳、執筆。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。新書に『新型コロナVS中国14億人』(小学館新書)。
Twitter: @sanadi37

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