出張1回で「隔離1カ月半」日中ビジネスの危機 世界初のロックダウンから1年経った中国の今

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三宅さんは日中の感染対策を比較し、「中国はやりすぎ、日本はやらなすぎ」と苦笑いした。

1月13日に自宅隔離が終了し、ルールでは外出できるようになったにもかかわらず、社区の担当者に止められ、数日間押し問答になった。

背景には中央政府の締め付けと、現場の過剰反応がある。大連市は1月20日時点で10日以上新規感染者は出ていないが、年が明けると北京に隣接する河北省でより大きなクラスターが発生、続いて東北部の黒竜江省、吉林省でも感染が広がった。

中国当局は北京への流入を防止するため、河北省の省都の石家荘市を封鎖したほか、新規感染者の過去10日の行動履歴を「●時●分にA駅から地下鉄●両目に乗車」「吉林省の林さんは4回の研修に登壇し、直接、間接的に139人に感染を広げた」など詳細に公表している。

共産党中央規律検査委員会は1月9日、「感染対策を怠った党員は責任を問う」との文書を発表した。文書では大連市でのクラスター発生の際に、「幹部は即時に対応しなかっただけでなく、自分だけ隔離して酒を飲んでいた」など、複数の個人名、処分名を出して「ゆるみ」を糾弾した。

見せしめの刑に処せられた大連当局は、自分のところで漏れを出さないよう、神経をとがらせている。

冷凍食品にも流通禁止令の徹底ぶり

2020年春から夏にかけウイルスをいったん封じ込め、大規模PCR検査や追跡アプリであぶりだしが可能な中国当局は、クラスターが発生するとすさまじいまでの執念で流入源を突き止める。

2020年12月に北京市順義区で発生したクラスターは、インドネシアから福建省経由で入国した男性が持ち込んだと特定し、大連市で昨年末に発生したクラスターは、ロシアからの貨物を扱う港湾作業者が持ち込んだと推定した。

人間だけでなく冷凍食品も感染を媒介するとみなされ、大連市では1月20日に冷凍食品の流通禁止令が出た。同市で調味料などを製造販売する松井味噌(兵庫県明石市)の松井健一社長は、「当社のお客様の半分は冷凍食品メーカーなので、春節前の書き入れ時に流通を止められると調味料を出荷できず影響甚大だ。年末のクラスターで1カ月近く工場を止められやっと再開できると思ったのに……」と頭を抱える。

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