中国でIT企業を経営する三宅雅文さんは1月21日、1年ぶりに大連市のオフィスに出社した。
「2020年12月23日に中国に入国し、4回のPCR検査と隔離・経過観察を経て1月20日にようやく公共交通機関の利用を許された。昨年の今頃は社員と春節前の忘年会していたのに、世の中どうなるかわからない」
新型コロナウイルスの脅威が公になり、パンデミックが起きた武漢市が封鎖され1年。感染は世界に広がり、日本は東京などで2度目の緊急事態宣言が発令された。
一度はウイルスを封じ込めた中国でも感染が再燃、中国政府は首都防衛のため大規模隔離とワクチンでウイルスを迎え打つ。物理的、心理的両面で世界に亀裂が入り、中国でビジネスをしてきた日本人は翻弄されっぱなしだ。
出張コストは中小に重い負担
三宅さんは富士通グループ会社勤務を経て2010年に起業。日本企業から受注したシステム開発を、中国オフィスで引き受けるオフショア事業を展開している。
日本では日本人3人、大連市で中国人エンジニア9人が働いており、三宅さんはこの10年、日本で営業活動をしながら毎月10日ほど大連に出張し、現地社員を指揮する生活を続けてきた。
2020年1月は普通に中国出張できたが、感染が中国全土に広がった2月は、大量のマスクとアルコール消毒剤を日本から運び込み、ほとんど外出することなくとんぼ返りした。
「感染症対策を徹底しないと春節明けの操業再開が許されず、マスク不足だった中国に日本から運び込んだ。あのときは日本は対岸の火事だったので……」
潮目が変わったのは3月。欧米や日本に感染が拡大した一方、中国は強権的な都市封鎖、外出制限でウイルスを封じ込めつつあった。国外からの感染逆流を警戒した中国政府は、その後入国を規制し、中国出張は極めて困難になった。
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