元プロ選手による「ネット教室」侮れない可能性 スポーツ選手のセカンドキャリアになりうるか

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また、汎用性の高いノウハウの動画、例えば世界的サッカー選手のメッシがドリブルをする際の足さばきや体の向きなど、一部の切り取った技術だけをアーカイブとして切り売りしていったとしても十分サブスクリプションのようなサービスは成り立つ可能性がある。

ただし、対面教室で行う練習をそのままオンラインに置き換えることは、今のところ無理がある。動画のやり取りを行う指導法はタイムロスが多く、指導者が子どもの動きを見て、自ら実演しながら解説するようなコーチングは難しい。

また、現場にいないため、野球のように多人数の練習をコントロールしなくてはならない競技とは相性が悪く、チームの雰囲気やモチベーションなど数値化されにくい要素が絡む全体練習には不向きだ。

「スキルのバラ売り」や「個人契約」にうまみ

一方で、「速い球を投げる」「球を遠くに飛ばす」といった基礎技術の習得や、「変化球を鋭くする」など特殊技術を教えることとは相性がいい。特定のスキルやテクニックに特化して教えていくことが、オンライン指導に最も向いている(これは野球に限ったことではない)。

いわば「スキルのバラ売り」だが、プロの高度な技術を求める人は世界中にいる。ピッチャーの変化球などは、個人で積み上げた独自のノウハウが大きな価値を持つ分野。技を習得したい個人と高単価の「パーソナルコーチング」契約を結ぶことも可能だろう。

なお、前述したオンラインに不向きな部分は、デジタル機器の発展によって解消されるかもしれない。スマホやタブレット、PCではなく、屋外の練習グラウンドで、動きや撮影範囲に制限がないもの――それがウェアラブルのグラスなのか、超小型ドローンのような飛翔体なのかはわからないが、普段のプレーをそのまま捉え、情報処理できる技術があれば、前述のような問題の一部は解消できるだろう。

最後にプロスポーツ選手のセカンドキャリアとしてのオンライン指導の具体的なステップアップについて試論する。

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